デジタル7割リアル3割という政府目標に組織全体で学習し対応しよう

 相変わらず世の中わからないことばかりですが、菅政権のデジタル庁新設、特に『デジタル7割リアル3割』という目標は、すごいことです。どこかで読んだことがあると思い本棚を探すと、ニコラス・ネグロポンテ著、福岡洋一訳の『ビーイング・デジタル―ビットの時代』アスキー、がありました。25年も前の本で、当時「こんな風になるのかなー全てがデジタルになるのか」という印象だったのですが、なぜかあまり理解できていなかったようです。後悔してもしょうがないのですが、この本に書いてあったことの多くは、今、世界中で現実になっています。

 それはともかくとして、この4半世紀という時間、自嘲的に「失われた20年」などという表現で、GDPの伸び悩みと公債残高の圧力につぶされそうになりつつ、日本は国際競争に負け続けてきたことは、事実として認めなければならないのでしょう。いつの間にか巨大IT企業が世界でGAFAと称されました。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンを仕事や日常生活で使用している読者は多いと思います。

 AIとかIoTという言葉も毎日のように見聞きしますが「人工頭脳」や「ものがインターネットにつながること」といってもいいし、ICTを「情報通信技術」でも構いませんが、それらがつながりあうことによって、リアルな社会とサイバー空間の区切りがなく活用され、快適な移動や効率的な生産が実現されていると考えこともできる時代になりました。そして、これらは現在の約100倍の通信速度になる「第5世代移動通信システム」5Gの登場で、社会の仕組み自体を変革させています。この5Gの携帯電話が日本でも販売され始めましたことにより、大量なデータのやり取りが可能になります、新しい世界が広がることになります。

◎ヒトとヒトのリアルが全ての医療や福祉のデジタル化とは

 経産省が推進したい「デジタルトランスフォーメーション:DX」という言葉も最近使われるようになりました。これには「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」という難解な定義が推奨されています。これも「デジタル技術による社会変革」でよいように思いますが、DXと書いた方がいいのでしょうか?

 デジタルによる社会変革を政府が強力に推進することが明確になった以上、ただちに対応する必要があります。ただ、IT最先端の日本の病院をみても『リアル7割デジタルリアル3割』としか思えません。医療スタッフ全員がスマートフォンでカルテをはじめ各種情報をやり取りしている病院を知っていますが、わたしは1病院しか知りません。この病院でさえデジタル7割にすることが、可能なのかどうか正直わかりません。一方、大多数の病院では、電子カルテは導入されていますが、その他のデジタル化が進んでいないという現状があるように思います。専門のシステムエンジニアが配置されている病院も多くなりましたが、全く情報リテラシーがないのではないかという病院もあります。

 それでも、平均的病院と特養を比較してみると、病院の方がデジタル化されていると思います。どこでもPCはありますし、会計ソフトや報酬請求ソフトを活用しており、最低限の情報管理は行われています。ただし、情報責任者や管理者が誰なのかも明確でない組織も少なくありませんし、情報に関する専門の教育を受けた職員も配置されていないばかりか、この分野の職員教育体制もほとんどないという現実もあります。

 感染防止策としてのWeb会議は、6か月程度で日本中に普及したように思います。しかし、この期間に私自身が体験した範囲でいえば、「しっかり調べて、正確に学習する」という基本的対応ができない組織が少なくないということです。特に、事務系職員であるにもかかわらず各種「解説本」も買わず、ネット情報だけで対応している場合や「わからない」といって調べること自体を放棄している職員もいました。このようなことが行政機関でも各種団体でも起こりましたので、先行きが心配でなりません。

◎何しろ学習する組織にすることが必要である

 そんなことはない「きちっとやっている」という組織が多いと思います。しかし、対人場面でもアクリル板の設置、空気清浄機の配置、PPEの3か月間在庫、デジタル補助金の活用、そして「かかりまし費用」の積算、優遇融資の申し込み、功労金の請求などの大量の業務が発生しているにもかかわらず、誰にもいわれないから「やってない」という組織をみると情けなくなります。総務省のデータでは、スマートフォンの保有率は10年の12.3%から19年には67.7%に向上したそうです。その後どうなっているのかわかりませんが、仕事にスマートフォンが必需品になるのに長時間かかるとは思えません。「わからない」なら「学ぶしかない」と思います。携帯電話会社が利用者対象にミニセミナーを開いている場面を、街中でみるようになりました。後期高齢者になっても「デジタル」時代を生き延びなければならないので学習せざるをえないのだと思います。これからの変革に、あらゆる組織で学習して対応する以外方法はないのではないでしょうか。職場全体を「学習する組織」に変革しましょう。

社会医療ニュースVol.46 No.544 2020年11月15日