ニューノーマルは勤怠管理を徹底的に見直すことになるのか

何を今さらと思うかもしれませんが、仕事の管理の最も基本的基礎的な管理は、出退勤(一般には勤怠)管理ではないかと思います。職員の無断欠勤、遅刻、早退、超過勤務、出張、外勤、代休、有給休暇などは、基礎的でもありますが、最近の在宅勤務、ホーム・オフィス、Web対応に限界のある病院や介護などの現場の大半の業務では、これが特に重要です。労働集約型24時間365日サービス業で、本当に困るのは、突然の欠勤ですし、遅刻を繰り返す職員がいると、全体の士気が低下します。職場のトラブルの原因になる場合さえあります。

専門性が優先され、組織単位が細分化されている組織の規律を維持し、勤労意欲を低下させないないだけでも、大変な労力が必要です。コンプライアンスの確保だとかモチベーションの維持などといえば、少しは柔らかいいい方になるのかもしれませんが、管理者の仕事は勤怠管理に始まり、これができない管理者は業務を放棄していると判断され、懲戒の対象にさえなります。このことを繰り返し周知徹底することが、必要不可欠で、何よりも基本的管理に注力することが求められます。

病院管理や社会福祉施設管理についての実態調査や研修事業に長年関わりましたが、勤怠管理に関わる職場の課題や問題は、解決されることなく、労働環境の変化に伴い新しい問題を発性させているように思えてなりません。働き方改革は、その賛否はともかく新しいルールなので、対応するしかありません。例えば、残業時間の制限とか有給休暇の消化義務に対して、管理の方法も、これまでの組織内ルールも、職場の文化も徹底的に見直す必要があります。定時退社が当たり前、職場研修は全て勤務時間内、職員有志による勉強会は参加者負担で、外勤先での残業時間も管理対象、有給未消化者に対する指導強化など山済みです。結果的にICT導入で、全てシステム化しないとかなり難しい局面です。

その上、このパンデミックでの時差通勤奨励、在宅勤務推奨、学会・研修会等のWeb開催、学校休校措置で子育て世代への対応、PCR検査陽性者や濃厚接触者への対応などで、実は既存の勤怠管理システムでは、完全に制度疲労の極致に陥ったのではないか、と思います。

◎勤怠から働き方管理へ

個人的には「勤怠管理」という言葉について、何度も疑問に思ったことがあります。公務員は、出勤簿に捺印して、有給等は必ず書類を事前に提出して上司の承認が必要でしたし、土曜日半ドン、隔週勤務も体験しました。その上、時間差通勤時間制やフレックスタイム制など、各種の制度も経験しましたが、公務員の世界では勤怠管理という表現はしません。理由ははっきりしませんが「公僕が怠けるわけない」という暗黙の了解が前提となっていたのかもしれません。

主に勤務時間管理と有給管理だけのことで怠けているかどうかの判断基準にするということは、何しろ、遅刻はしない、欠勤がない、有給は最小限しかとらなければ精勤で、その逆は怠けているということになるわけです。「休まず、遅れず、働かずでも、定期昇給はあるし首にはならない」という話を、何度か聞いたことがありますが、本来、勤務時間管理と勤怠管理は同様ではないのではないかと考え込んでしまいます。毎日、時間を守り休まなければ精勤だと判断されるのは、本を開いて机に向かっていれば「よく勉強してる」と褒められるのに似ていますね。席についてPC画面に向かってはいますが、何を見ているかはわかりません。ひどい人になると、ゲームを楽しんでいる場合まであります。勤務状況だけで怠けているかどうかは判断不可能ですが、遅刻や欠勤は怠けている証拠の一部になるということでしょう。怖いのは、休まない人の評価が高いという組織文化が転じて、有給休暇を完全消化する人は、評価が低いという空気が出来上がることです。

在宅勤務を継続してみてわかったことがあります。在宅勤務の勤怠管理は、かなり難しいのではないかということです。何しろ人の目がありませんので、よっぽど強い意思で自らを管理しないと、さぼる誘惑に満ち溢れているからです。本当に怠けることを管理するのは難しいことだと思い知らされました。これからは、勤怠管理から働き方管理へと変化するのがニューノーマルなのではないかと思い到りました。

◎人的資源管理なのか?

「勤怠から働き方へ」のシフトを強く意識したのは、勤怠という言葉を英語に置き換えることが、できないからです。いろいろ考えましたが、タイム・マネジメントとかジョブ・アウトという表現を駆使しても、表現できません。どなたでも結構ですので、是非教えていただきたいです。とりあえず、勤怠というのは、漢字文化圏だけに通用するのだということにして、今度は「働き方の管理」をどう表現するかです。働かせ方改革ならわかりますが働き方は働く方が選択することになるので、これを管理するというのも至難の業ではありません。

人事管理や労務管理は、世界中どこにでもありますし、ヒューマン・リソース・マネジメントなどといういい方になると、採用から退職までの人的資源をどのように管理するのかという意味になり、勤怠管理とはかなり違うスタンスということになります。

経営学の分野というか経営学部では、必ず人的資源管理の科目があり、主に経営戦略との関係や組織構築のあり方、雇用・人材育成・評価・昇進・賃金等の制度設計の考え方、グローバル社会との関わり等について議論されます。今後は、働き方改革との関係や在宅勤務の普及に伴う研究が日本の勤怠管理を徹底的に分析して、ニューノーマルのあり方を示して欲しいと思います。

社会医療ニュースVol.46 No.542 2020年9月15日