病院入院患者さんが少なくなったのが当たり前で病院経営は冬の時代に突入

WHO事務局長は、2023年5月4日にCOVID-19を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」ではなく、現在も継続中の健康問題であると判断するという声明を公表しました。少しややっこしいのですが、WHOがCOVID-19についてPHEICと声明したのは、20年1月30日、それをパンデミックと宣言したのは同年3月11日です。

最新のWHOのレポートでは「世界全体では、2023年11月20日から28日間の新規感染者数は、その前の28日間と比較して52%増加し、85万人以上の新規感染者が報告されました。新規死亡者数は過去28日間と比較して8%減少し、3000人以上の新規死亡者が報告されました」とされています。脅威はまだ収束していないのです。

日本政府が「指定感染症」の2類相当にしたのは20年2月7日で、それを5類感染症にしたのは、23年5月8日です。つまり、この3年3カ月間が緊急事態に対応してきた厳しい時期だったのです。1184日間の戦いは歴史として記憶されることになりますが、この間の日本の病院の窮状も忘れることはできません。

この間、毎月公表される厚生労働省の「医療施設・病院報告」の月間概数を注視してきましたが、ちなみに18年9月から5年後の23年9月までの病院病床の変化を一般・療養病床別にまとめてみましたので、ご覧ください。

◎2類相当前後比較の試み

表をご覧いただくと、以下のことが読み取れます。

①病院数も病床数の全ての数値が減少。
②一般病床1日平均患者数は、5.5%減で病床用率は67.5%で9%減。
③一般病床の月間平均在院日数は、16.1日から15.9日に0.2日減。
④療養病床を有の病院数は、6.8%減で療養病床数は10.8%減。
⑤療養病床1日平均患者数は、13.7%減。
⑥療養病床月末病床用率は、86.3%から83.9%に2.8%減。
⑦療養病床月間平均在院日数は、26.3%減少。

こんなことなんだ、と思えばそれでいいことです。ただし、一般病床の病床数は僅か0.4%の減にもかかわらず1日平均入院患者数は5.5%減少し、9月月末の病床利用率は9.0%減少していることが何を意味するのかがは、興味深いと思います。考えられることは、各種の理由で「緊急事態下」で一時的に一般病床の入院患者は急激に減少し、その後、病床利用率は7割以下を低迷しているということです。

深刻なのは、1割以上の療養病床の病床減、入院患者減です。特に、療養病床の月間平均在院日数の4分の1以上の減少をどのように考えるかは、重要なのではないだろうか。はっきりいってしまえば、療養病床は競争力が低下し介護老人福祉施設や有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、認知症グループホーム、その他の小規模多機能型居宅介護をはじめとする在宅ケアと競合する局面が増加したということになるのです。

更に深読みすれば、病院は療養病床をヤメ、無謀なことに一般病床に回帰しようとしているのではないかという疑惑が脱ぐいきれないのではないでしょうか。

◎今後の病院経営は激変

この5年間を月別に観察すると22年12月末日の病床利用率が最低かもしれません。一般病床で55.9%、療養病床で81.5%でした。病院経営という観点でみると、現行の診療報酬では、低い病床利用率では経営的に不利で、病床利用率が高いことが経営的に有利に働く、という古典的状況のままです。いつも申し上げているように一般病床で8割療養病床なら9割以下では、経営的にみるものはほとんどありませんので、病床を一時閉鎖するか病床削減しないと経営的に対応できないのです。

病院経営はすでに激変しているのです。

社会医療ニュースVol.50 No.582 2024年1月15日