「老いるショク」は3度来る!人生90年の時代

「老いるショク」という言葉は江見康一先生の造語で、表題は16年前の05年に「かんき出版」からだされた本の題名でもあります。73年1月からいわゆる老人医療無料化があって「福祉元年」と呼ばれましたが、この年の10月の第4次中東戦争でオイルショックが起きたのです。そこで江見先生は、石油の「オイル」と、年をとる「老いる」とをひっかけて2つのあいだの共通性を考えてみたそうです。まず、50代で老いを意識したら、すぐに「老いるマネー」の準備にとりかかってくださいから始まる「老いる」ことへの心構えは、当時84歳であられた経済学者の忠告に満ち溢れています。特に、健康のK、経済のK、そして生きがいや心のKの3つが長い老後を乗り越える「老後の持参金」なのだという主張は今でも新鮮です。

江見先生は一橋大学で財政学を学び米国留学を経て母校の教授になった経済学者です。わたしの父と同い年で同門の数少ない社会保障の研究者でもあります。

今年以降は47年生まれの方が75歳になられ、いわゆる団塊の世代がいよいよ後期高齢者に大量になることになります。統計上の少子高齢化の現実は想像以上で、20年前と比べると恐ろしく感じるような現実が目の前で展開されています。

まず、過疎地と呼ばれる地域の高齢化は、すでに70歳が若い方に分類され、20代は皆無、小学校も廃止され共同体としての地域を維持することが困難な状況になっています。買い物、通院、介護はまったなしですし、大都市に住んでいる人には、想像することもできない状態だと思います。農業や漁業、林業や牧畜業は産業として維持できるかの瀬戸際まで追い込まれています。高齢化より人口減の影響の方が大きく働き盛りは公務員か準公務員待遇の人だけという地域も出始めています。海外からの技能実習生がこれなくなってしまったので「廃業」を検討せざるをえないという切実な話も聴きます。

還暦を過ぎて気づくことは、ひょっとしたら70歳は若い方だということです。また、70歳過ぎて働いていない人より働いてる人が多くなったような気がしますし、個人差が大きのですが働ける人はいくつになっても働くという社会なのだと思います。お付き合いがある医師は健康上の理由などがない限り70代でも働いていますし、80代で現役は珍しくありません。看護師もこのような傾向がありますね。

若い人の仕事を年寄りが奪うみたいな感覚は、今は少なくなり65歳以上の人々は貴重な労働力として再認識されているのではないでしょうか。つくづく思うのは今50代の人々は「老いるマネ―」の準備を始めているのでしょうか?少なくても75歳までは働く意欲、体力、若干のスキルアップに努めているのでしょうか?老後はどうにかなるということは幻にしかすぎませんよ。今、どこにも勤めていないようで年金だけで生活しているようにみえる人でも、不動産収入や金融投資でちゃっかり生活をエンジョイしている人も少なくありません。

結局、若い時から江見先生のおっしゃる3Kを大事に長い老後を乗り越える「老後の持参金」を、50歳代になるころまでには心がけて欲しいものです。今の90歳以上とこれから70代になる人では、どう考えても90代以上は「逃げ切り成功組」これからの70代は「格差拡大世代」、今の50歳代は「老いるマネ―」をしっかりため込む「堅実世代」と呼ばれる時代になるのではないでしょうか。お金が足りないと思う人は気力・体力を蓄え家族や友人を大切にし、もう一度勉強してみましょうよ。

社会医療ニュースVol.48 No.558 2022年1月15日