大坂巌先生の「ガン疼痛治療25の秘訣」
6月22日 12:41 四国中央市 Facebook
【今朝のできごと】
半年近く、ほぼ寝たままで過ごしておられた患者さん。朝5時頃に状態が悪いと連絡があり、いつも通りに6時前に医局に着いたところで再び連絡あり。そのまま病棟へ赴き、最期のご挨拶をした。
ところが、夜勤の看護師さん達が寂しそうな表情をしている。
「○○さん、お風呂に入れてあげたかったんですよね・・・」
ご存知のように6時~8時は大忙しの時間帯であり、看護師2人でお風呂に入れるわけにはいかない。何を期待しているのかはすぐにわかった。
「よし、やろう!」と慣れない入浴介助へ。
痩せたからだ、褥瘡、CVポート、麻痺のため伸展できない下肢、垢もどんどん取れてくる。浴槽につかると、なんだかとっても嬉しそうな表情をしていた。入浴介助をしながら、看護師さんとたくさんのエピソードを語り合った。
イレウスを繰り返していたが、どうしても食べたいというのでセブンイレブンで買ってきた卵サンドをあっという間に平らげたときには驚いた。
長い間、お疲れ様でした。少しは気持ち良かっただろうか?
以上は、社会医療法人石川記念会 HITO病院緩和ケア内科部長大坂巌先生の投稿記事を再掲させていただいたものです。
この大坂先生の著書「ガン疼痛治療25の秘訣」(中外医学社)という本を読みました。
「一般的にはガンの進行により痛みは増強する傾向にあると思われます。ところが、化学療法や放射線治療法などの治療を開始することで、痛みが軽減し、オピオイド鎮痛薬を減量しなければならないことがあります。一方、化学療法誘発性末梢神経障害による痛み、術後の痛み、放射線治療後の痛みが増強してくる可能性もあります。」
臨床現場では「疾病の軌跡」がありますが、大坂先生は「痛みの軌跡というものが考えられるかも知れません」とおっしゃいます。「おそらくは、患者さんごとに異なり、2つとして同じ軌跡はないでしょう。しかし、ある程度予測できることはあるかもしれません。将来的に痛みがどのように変わっていくのかを予測し、その変化に合わせたガン疼痛治療を行うことはとても重要です」(27頁)。
「オピオイド鎮痛薬を用いたガン疼痛治療というのは、決して簡単な仕事ではありません。特に、外来で治療を行うということは、患者さんの状態変化までも見据えた治療を行うというレベルの高い仕事であると私は考えています。喜びも大きいです。痛みのために様々な苦痛に縛られている患者さんが、多くの呪縛から解放されたときに見せてくれる笑顔は本当に尊いです」(124頁)。
書かれている内容は、正直かなり難しいです。ただ、ガン疼痛と今ともにいる人やその家族そして多くの医療従事者には本当に良書だと思います。ガン疼痛の体験もなく、医療知識がなくとも「痛みの世界」のリアルが淡々と、時には軽妙に、知的興味を増幅させてくれる本です。
この本とほぼ同時に大坂先生の「がん診療における対話力をみがく」(中外医学社)も出版されました。この本を読むと改めて「言葉は人を癒す」のだと実感でき、どんな人も「コミュニケーション能力は磨ける」のだと痛感します。
薬物療法のほか、従来のガイドラインや神経ブロックや放射線治療、IVRなどの非薬物療法まで、一歩進んだ緩和ケアのアプローチに興味がある方には「一歩進んだ緩和医療のアプローチ: その難しい症状, どう緩和する?」(南江堂)も興味深いでしょう。大坂巌・佐藤哲観・新槇剛・角田貴代美編著です。
社会医療ニュースVol.48 No.564 2022年7月15日