AD関連書籍読みまくり
認知症基本法が施行されるというので、年末年始にアルツハイマー病(AD)関連書籍を読みまくって過ごしました。何か認知症と共に生きる人々の社会史的理解について文献的整理ができないかと始めてみましたが、これが結構手ごわいことになりました。
第1に、国際的に一定の評価を受けている学術論文の検討とは別に、広範な認知症に関するサブカルチャーを含む情報(書籍、雑誌、絵本、漫画、イラスト、映画、観劇、SNS)などの存在を無視できないので、どうしたものかと思いつつ、とりあえず集めるだけ集めてみたのです。これがとんでもない量になり、整理不能です。変な話になりますが、かつて岩波映画「痴呆老人の介護」(橋田澄子監督)が高く評価され、世論に大きな影響を与え、厚生省の政策に影響を与えたのは確実である、ということを資料にしたものかと考えあぐねています。
第2に、認知症研究の第1人者であった老年精神医学社長谷川和夫先生の2019年「自らも認知症になった専門医」という立場からの書籍は、認知症とともに生きる人からの強烈なメッセージとなりました。これ以降、当事者でもある認知症とともに生きる人々を交えたシンポジュウム等が急増し、そのことが認知症自体への社会的関心を集中させるだけの影響力があったことも、同様です。でも、当事者不在なところで喧々諤々するより、いろいろなことを話し合いながら進めていくのは、とても実り多い体験です。
第3にADに関する研究が進み薬物対応の新時代の幕開けが強く意識され、変革期を迎えていることを研究者のみならず世論が追認する事態が巻き起こっています。認知症専門医以外の医師、多数の看護師、そしてこれら以外の医療実践者や社会的ケアの実践者たちは、最新鋭の科学的知見の現状を要領よく学びたいというニーズを保有しています。それゆえ、網羅的最先端の科学的知見を紹介する書籍が必要なのです。このようなニーズに対応している書籍としては、『スタール博士の図解・アルツハイマー病とその他の認知症』ワールドプランニングや、岩田淳・橋本衛編『アルツハイマー病治療の新たなストラテジー』が参考になります。もちろん、昨年10月号で紹介した下山進『アルツハイマー克服』角川文庫23773のような、ノンフィクション作品は、広く読者を集められると思いますし、AD研究者ではない私には、とても役立ちました。
第4に、イラスト集、マンガ、旅行記のような形式の書籍として『マンガ 認知症』(ちくま新書)は画期的ばかりか、実際に家族間で起こる身近な事柄を丁寧に拾い上げていて好感が持てます。筧裕介の『認知症世界の歩き方』ライツ,2021.は、認知症のある方を読者に想定している「旅のスケッチ本」であり、認知症とともに生活する人々に最適だと考えられます。今、私たちは認知症とともに生きる人々の社会史的理解を深め、認知症とともに生きる人々と共生する社会づくりが必要であると考えられるのです。
社会医療ニュースVol.50 No.583 2024年2月15日