フィールドスタディの意義
今年もまた9月下旬から兵庫県立大学大学院経営専門職専攻の医療・介護マネジメントの14年目の大学院生と教員7人が参加するフィールドスタディが開始されました。社会福祉法人恩賜財団福井県済生会病院、医療法人共和会小倉リハビリテーション病院、公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院 、社会福祉法人鶯園神戸事業所にお邪魔し、素晴らしいプレゼンテーションと真剣勝負のデスカッションをさせていただきました。
各施設の皆様には多大のご迷惑をおかけしていますが、大学院生は今後6カ月間をかけて各病院・施設の経営戦略を立案するという作業があります。経営学の履修方法のひとつとしてケース・スタディがあります。実際の企業や組織の事例を資料としてまとめ上げ、履修生はそのケースを事前に読み込み、集団討議を進めるというもので、世界の経営大学院の大半がこの方法を採用しています。
事例を作成するにはそれなりの努力が必要ですが学習方法としてかなり有効です。しかし、日本の医療保険制度のように頻回に診療報酬制度が変更されると、2年前の事例すら時代遅れになってしまいます。つまり「リアリティ」が欠如すると、何が正答なのか判断できなくなる恐れがあります。
そこで考えたのが現地・現物・現在に直面するケース・スタディなのです。参加する大学院生には、事前に調べられることを全て調べておくように指示してはいますが、病院や社会福祉施設の経営課題を外形から調べ上げることは、ほぼ不可能です。そこで先方から提供されるプレゼン資料と限られた時間の質疑応答で正確な情報をかき集めることが求められます。
この方式の教育効果を正確に測定することは困難ですが、教員間では驚くべき効果あることがわかりました。第1に、同じ場所で、同じ教員が、同じ体験を、毎年行うことにより、教員間の認識が共有されることです。第2に、これまでの訪問時にはなかった新しい課題を理解できることです。そして第3に、例えば直近5年間経営課題を動的に解釈できるという恩恵があります。
別名「病院の定点観察」などと呼んでいますが、経営状況の変化をリアルに把握できますし、経営問題解決のための方策について教員間でデスカッションすることも可能です。わたしは年間2回以上訪問している病院がいくつかありますが、3カ月前には予想すらしていない問題が発生していることが多く、定点観察は有効だと思います。
社会医療ニュースVol.50 No.591 2024年10月15日