病院を取り巻く環境は急激に変化し病院経営は増収減益体質に変化した

今にはじまったことではないが、病院経営上、増収減益というのが当たり前の時代になった。この十年間診療報酬改定の影響は微増で、病院職員の一人あたり年間給与もそれほど上昇していない。増収減益という現象は、なぜ起きるのかを考えてみると、すぐに思い浮かぶのが、職員を増加させれば、収益は上がるが、職員採用費用が収益増を上まわるということである。

ちなみに、2007年と2017年の診療種類別国民医療費から病院医療費を計算すると前者が約十七兆三千億円、後者が約二十一兆九千億円となるので、病院医療費は二六・九%延びたことみなる。

この頁の表をご覧頂きたい。十年間の病院職員数を比較してみると約三十五万五千人増加して、増加率は二〇・四%である。この間病院医療費が延びても、職員数が二〇%以上延びている事実は、正確に理解する必要がある。看護師は、この期間に三割増加しているが、准看護師や看護業務補助者は、むしろ減少傾向なので、看護職計では一一・五%増加しているに過ぎない。

◎病院職員におけるリハビリテーション職種の急増

つぎに、管理栄養士と栄養士を見比べて欲しい。病院の管理栄養士が増加し、栄養士が減少していることがわかる。今回の診療報酬改定でもICUへの管理栄養士の配置が新設された。この十年間の診療報酬や介護報酬では、咀嚼嚥下などを含めて広い意味での栄養関係報酬が評価されてきた。このことは栄養専門職を増加さたが、特に、管理栄養士の必要性が再認識されていると考えても良いと思う。

はっきりわかるのは、十年間で理学療法士が125%、作業療法士107%、言語聴覚士134%に増加したことである。社会福祉士も257%と急増している。これらの職種は、リハビリテーション医療が社会的に評価され、回復期リハビリテーション病棟の増設に伴う増員であると考えられる。社会福祉士の急増は、リハビリテーション医療の普及の影響とともに高齢入院患者の急増や入退院支援の強化などが影響していると考えられる。わが国のリハビリテーションは、国際的にみればセラビストの量としては、最先端と考えても良いが、今後も急激に養成されるリハビリテーション職種を病院で吸収することになれば、病院医療費は増加されざるを得ないことは明らかであろう。

◎事務職員の急増もあり病院医療費の伸びは抑制できない

このようなことを考えると増収減益になる理由が、職員増によると説明することは可能であると思う。なにやら医療費の伸びを抑制しなければ、社会保障全体が維持できないといった論調が少なくないが、病院医療費の伸びを抑制することはかなり難しいことのように思えてならない。この一〇年間で病院の事務職員は38.1%増加しているが、この増加率は医師よりも看護職計より急激で、病院マネジメントは複雑化・高度化・情報化され多くの職員が必要になっている現状を理解する必要がある。

病院の病院経営は、そう簡単ではないし、病院の種別や規模、地域の社会経済動向や医療機関同士の競合状態によって千差万別であるともいえる。経営という観点でみてみると、診療報酬は改善されず、病院職員数は増加し、入院患者も人口も減少しているということになれば、医業収益から医業費用を減じた医業利益が、年々圧迫されていることは確かであろう。つまり、病院経営は、今や増収減益があたり前の時代になって久しいということである。病院を取り巻く環境が変化したということを認めることが必要であると思う。病院の入院患者の七三・三%は、高齢者で、このすさまじい入院患者の高齢化が、わが国の医療を大きく変化させたことは間違いないことである。

表 病院職員数の推移
   2007年2017年増減比
病院職員総数1,736,3622,090,96720.4%
 医師183,828217,56718.4%
  保健師3,5175,65860.9%
  助産師17,59722,88130.0%
  看護師618,406805,70830.3%
  准看護師176,441113,465-35.7%
  看護業務補助者191,323175,234-8.4%
 看護職計1,007,2841,122,94611.5%
  理学療法士34,78278,439125.5%
  作業療法士21,77645,164107.4%
  視能訓練士2,8524,32051.5%
  言語聴覚士6,73815,781134.2%
 リハビリ職計66,148143,704117.2%
  管理栄養士16,85922,43033.0%
  栄養士6,0264,717-21.7%
 栄養専門職計22,88527,14718.6%
  精神保健福祉士6,3249,82255.3%
  社会福祉士3,62512,966257.7%
  介護福祉士25,06145,19780.3%
 福祉専門職計35,01067,98594.2%
 事務職員157,826218,00438.1%

社会医療ニュース Vol.46 No.535 2020年2月15日