コーポレート・トランスフォーメーション

これは富山和夫さんの著書で副題は「日本の会社をつくり変える」文藝春秋刊です。本紙1頁に「デジタル技術による社会変革」を意味するデジタルトランスフォーメーション:DXのことを書きましたが、富山さんは「会社を変えろ」とおっしゃっているので一気に読みました。最近「ニューノーマル」関連の書籍が出版されていますが、この本は論旨明快なので購読をお勧めします。フォーメーションの略字をXと書くそうなので、さしずめCXということになるのだそうですが、第1章今こそ「日本的経営モデル」から完全に決別せよ、はわかりやすく、2章以降はCXの進め方が論じられています。うまく説明できませんが、このままではもうだめだということが書かれていますので、読むしかないと思います。

実はDXという表記はみたことがありますが、どうせ「デジタルシフト」を大げさにいうだけだろうと、わたしは考えていましたが、今年になってからは本やYouTubeをみざるをえなくなりました。教科書的には、アナログをデジタルに変えることが「デジタイゼーション」で、プロセス全体をデジタル化するのが「デジタライゼーション」とよび、デジタルにより社会全体をよりよく変えていくことをDXと定義するようです。

医療の世界では、ITを活用するという意味のe-Healthとか、モバイルを利用した電子カルテや健康管理などのm-Healthという言葉もありますし、手術支援機器のダヴィンチや画像診断にAIを活用するとか、各種センサーによる情報を計測して数値化する技術の総称であるセンシングなど多彩です。介護の分野でも介護職員の労働負荷を軽減するサイボーグ型装着機器とか、介護そのものを代行する介護ロボットなどの開発も急激に進められています。

今回のパンデミックで、在宅勤務が奨励されていますが、なぜかオンライン診療に関心が集中していますが、体温、血圧、血糖はじめ運動量や睡眠時間などのセンシング技術はすでに確立されていますので、慢性疾患の管理精度は飛躍的に向上するはずです。

今年10月以降、内閣府の規制改革推進会議の医療・介護ワーキング・グループで審議されている「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」に規定されている「プログラムおよびプログラムを記録した記録媒体」であるサムディー(Software as a Medical Device:SaMD)の承認に関する規制緩和議論の開始もある。この分野は米国とドイツが昨年制度整備と開発促進策を進めているが、河野太郎行革相が積極姿勢を示している段階です。

さて、DXとCXということを1か月ぐらいかかり調べてみましたが、何かが足りないように思えてならなくなりました。企業はDXだとかいいますが、それは所詮顧客を創造できるからにほかなりませんが、そのためには政府のお墨付きと支援が必要であるということが前提条件なのではないのかと思えて仕方ないわけです。日本の医療は規制産業ですが、強固な医療保険制度と国際比較しても相対的に資質の高い医療従事者により組み立てられています。それはその分、新規参入者にはフレキシビリティーにかけると映るのでしょう。DXが日本の保険財源を当てにしているのなら、多分世界に勝てないでしょう。

デジタルによる社会変革は必然だと思いますが、富山さんが主張しているように、今の企業ではDXに対応できないからCXが先だともいえるし、その逆も真なのではないでしょうか。つまり、日本の企業が変わらなければ日本は変われない。変われないなら結果はみじめなのでしょう。もしそうなら、医療も福祉も変わるのでしょうし、病院の社会福祉施設も変わらないと生き延びられないということになるのでしょう。

社会医療ニュース Vol.46 No.544 2020年11月15日