ワクチンのめどがついた後の課題はグリーンとデジタルが世界を変える

1月18日、菅義偉首相は、施政方針演説の中で、「グリーン」と「デジタル」を「次の成長の原動力」にしていくと表明したことを覚えていますか?

「そんなの関係ない」とか「それがなにか?」などといった途端、近い将来とんでもない不利益を被るかもしれませんし、とても暮らしにくくなります。各分野のリーダーや経営者は、このことを理解しないと生き残れないかもしれません。

すでに昨年10月26日の第203回臨時国会の首相の所信表明演説において「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。また、デジタル政策については、今秋に創設する「デジタル庁」を組織の縦割りを廃した「改革の象徴」とし「国全体のデジタル化を主導する」と話しています。

カーボンニュートラルとは、地球の温度上昇を抑えるため二酸化炭素の大気中の排出分をプラス、大気からの吸収分をマイナスとした場合、プラスとマイナスが相殺されてゼロ(中立:ニュートラル)になることを意味します。だれでもご存じなように「温室効果ガス」とも呼ばれる二酸化炭素は化石燃料などを燃やすと発生しますが、植物は葉の気孔から取り込みます。つまり、カーボンの発生を減少させ、地上の植物や海中の海藻を増やせばよいことになります。

昨年の所信表明演説では「鍵となるのは、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです。実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進します。規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資の更なる普及を進めるとともに、脱炭素社会の実現に向けて、国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど、総力を挙げて取り組みます。環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進めていきます。世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります」と明確です。

さらに「役所に行かずともあらゆる手続ができる。地方に暮らしていてもテレワークで都会と同じ仕事ができる。都会と同様の医療や教育が受けられる。こうした社会を実現します。そのため、各省庁や自治体の縦割りを打破し、行政のデジタル化を進めます。今後五年で自治体のシステムの統一・標準化を行い、どの自治体にお住まいでも、行政サービスをいち早くお届けします。マイナンバーカードについては、今後二年半のうちにほぼ全国民に行き渡ることを目指し、来年三月から保険証とマイナンバーカードの一体化を始め、運転免許証のデジタル化も進めます。こうした改革を強力に実行していく司令塔となるデジタル庁を設立します」と力強く話されたのです。

◎ドイツ憲法裁判所の気候変動法違憲判決

4月29日にドイツ連邦憲法裁判所(サイトに“BVerfG”と打ち込むと㏋があり英文もあります)がドイツの「気候変動法」の一部をドイツ憲法基本法に違憲とする決定を下したというニュースが飛び込んできました。2030年以降の温室効果ガス削減に関する内容が十分でないとして、これを「未来世代の基本権侵害」と判断したのだというのです。この判決は、ドイツの複数の環境保護団体が起こした違憲訴訟に対して下されたもので「カーボンニュートラルを達成するには不十分。パリ協定で定められた気候変動抑制目標を達成するには、2030年以降に、より急激に温室効果ガスを削減しなければならなくなる」と判断したそうです。

判決文には「基本法は、現世代が生命の自然的基礎を慎重に扱い、後の世代がそれを保存できない状況に置かれないようにしている」とした上で「人間の生活のほとんどの側面が温室効果ガスの排出を含むため、排出量を減らすことはあらゆるタイプの自由に影響を与える。削減の負担を2030年以降に先送りすることは、若い世代の自由を侵害するもの」と書かれています。

これまでにも、オランダとアイルランドの最高裁判所、フランスの裁判所などの司法機関は、気候変動は政治と政策の領域ではなく国民の基本権侵害にかかわる司法の領域であるという考え方を示してきたという単発的なニュースはありました。この判決は、国が現在の世代と未来の世代を気候変動から同様に保護できなければ基本権の侵害となることを認めたということなので、世界中から注目を集めています。

国のかたちばかりではなく、世界のかたちが変わろうとしているのです。

◎世界中の投資家が脱炭素企業以外には投資しなくなる傾向

日本では報道されることが少ないカーボンニュートラル関連ニュースは、世界の最重要課題です。ドイツ憲法裁判所の判決は世界の各種環境保護団体から歓迎されていますが、変わり身の早い金融機関や投資家は「地球環境に配慮しない企業には投資しない」という姿勢を鮮明にしています。個人でも株式投資が日本より盛んな国々では「モノいう株主」の存在が無視できません。実際に環境に最大限配慮している企業に、投資が集中して株価が上昇する傾向は無視できなくなっているのだそうです。

すでに世界の成長産業のほとんどがデジタル関連企業、つぎがカーボンニュートラル関連企業になる傾向があることを、もはや否定する人は経済専門家にはいないようです。

ワクチン騒動の渦中で世界は激変中なのです。

社会医療ニュース Vol.47 No.551 2021年6月15日