医療経営に忍び寄る闇

4月下旬ごろからCOVID-19の患者さんの診療をしていない病院から「患者さんが半減で、つぶれるかもしれない」という悲痛な電話を数件いただいた。

「現在のところ、借り入れの返済猶予や補償、納税や社会保険料の事業主負担の支払い延期や免除などが検討されていますので、何しろ資金繰りに集中しましょう」などという頼りにならない返事をするのが精一杯。こんな時に、病院経営継続性に不安がない経営者は、いないはずだ。言わずもがな「有事の際こそ、リーダーシップが試されますので、トップは落ち着いてください」などと余計なことをいい、自己嫌悪になる。

病院は、地域のライフラインで、公的であろうが民間であろうが、公正で公平な医療提供のための、いわば公器だ。経営が継続できなくなれば、地域住民の生活に支障をきたすので、つぶれないように支える必要がある。

今では、ことさら医療費適正化とか抑制といわなくなってしまうほど、医療費で削れるところは、削られて、民間の急性期だけの病院でも、良くて1%台の経常利益がやっとだ。正直、キャッシュフローのリダンダンシー(余裕)がない。そこに、襲いかかってきた大災害に、対応するすべがない。

どう考えても、シナリオは、公費投入して、病院の経営継続性を担保するしかない。日本中で多数の病院が倒産すれば、地域は大混乱して、それこそ医療崩壊してしまうことは明らかなのだ。

どうして、こんなにまで病院経営が圧迫されてきたのかといえば、医療の供給体制、例えば、病床が過剰だから、もっと診療報酬は抑制してもいいという短絡的な予測に基づいてきたに違いないのだ、と改めて腹立たしい。だから、わたしは、病院経営は社会的災害にあっていると主張しているのだ。

遠い過去に、さんざんいじめておいて、都合が悪くなると、手のひらをかえしてくる悪ガキがいた。今は、まともになっているかどうか、今度こそ確かめたい。

社会医療ニュースVol.46 No.538 2020年5月15日