新公立病院改革ガイドラインの再検討で改めて公立病院の役割を明確にする時期

9月29日地方財政審議会は「令和3年度の地方財政への対応等に向けた課題の整理」を公表しました。

その中で「公立病院改革を適切に進めていくためには、地域医療構想全体の方向性も考慮するとともに、持続可能な医療提供体制の確保に向けて、公立病院が地域において担うべき役割などについて、今般の新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえて再検証する必要があると考えられる。そのため、現行の新公立病院改革ガイドラインの改定等を含む同ガイドラインの取扱いについて改めて再検討すべきである」と書かれています。

これを受けて10月5日、総務省自治財政局準公営企業室長が「新公立病院改革ガイドラインの取扱いについて」通知しています。

この中では「(1)現行ガイドラインの改定等を含む同ガイドラインの取扱いについては、その時期も含めて改めてお示しすることとする。(2)各地方公共団体におかれては、本年度が新公立病院改革プランの標準的な対象期間の最終年度であることを考慮し、現行ガイドラインを踏まえ既に作成している新改革プランの実施状況の点検・評価を実施していただくようお願いする」と書いてあります。

◎公立病院の使命としての感染症病床が設置される?

昨年11月末の全国の感染症病床は1884床設置されており、その一覧をみることができます。厳密には、特定、第1種、第2種に区分されていますが、約9割は国公立と公的病院ですが、医療法人、財団法人あるいは会社立などの病院もあります。病床数は、ほとんどが2床か4床で、6床以上の方が稀です。これとは別に結核病床がありますが、今回の感染患者・感染疑い患者には感染症病床が、優先的に利用されることを想定していたのだと思います。大多数を占める第2種感染症病床は、通常は施錠されており、有事に人員配置される前提になっています。公立病院の感染症病床をご覧になった方は稀かもしれませんが、これが現状なのです。

ただし、現行の感染症予防法第19条第1項但し書きには「ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院若しくは診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院し、又は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる」とあります。

いつか感染症のパンデミックが起こることは、想定内で感染症病床も制度的には整備されていました。しかし、その全てが国公立病院ばかりではなく私立に属する病院も存在しています。基本的には都道府県知事が指定しますので、公立病院がない地域などでは公立以外に対応いただいているという現状です。よーく考えてみると、公立病院の使命だから感染症病床が整備されているのではないということです。また、現在の感染症病床で人工呼吸器とかECMOを使用する重篤感染症患者に対応することは、前提となっていなかったということになります。

◎パンデミックに対応できる病院の強靭化は無策だった

日本中の病院の現場で職員が活動し、目に見えないウイルスと懸命に戦っている現時点でいうことではないと思いますが、連日「医療崩壊の危機です」と報道されているのをみると、3密回避と自粛要請だけではなく病院の強靭化を図る必要性は明らかだと思います。感染者に対応している市立病院4病院の現状について、経営幹部から直接話を聞いていますし、毎日のように各地の病院職員と連絡している狭い範囲の情報では、まず、救命救急センターや大学病院のICUなどに入院している重篤な患者についての報道はありますが、重篤ではないものの病院に入院している大多数の患者さんは注目されていません。12月1日現在ですと、重篤患者さんは493人、入院患者数は2万人程度です。2万の中から重篤になる患者さんが増加しているわけですから、この2万人の患者さんに適切な治療が必要だということを根本的に理解する必要があります。そして、この2万人に対応している全国の病院の職員も疲弊していることを理解して欲しいと思います。次に、救命救急センターやICUは重篤な感染症入院患者専用病床ではありません。より正確にいえば、これらの病床で隔離用の陰圧室があることの方が稀だということです。

何か不安を助長させるために書いているわけではありませんが、長い間パンデミックに襲われませんでしたので、その分、病院の強靭化については無策だったのだと申し上げるしかないと思います。

◎公立病院ごとの成績表を明らかにして欲しい

今回の病院の対応で大多数の公立病院は、迅速に準備し、懸命に対応していただいていると感謝しています。患者を受け入れた病院ばかりでなく、準備はできているが地域に感染患者が未発生という病院もあります。その一方で、どのように考えても、患者受け入れに難色を示し、人員不足等を理由に受け入れることを拒否しているとしか考えられない公立病院や公的病院があるのではないかと思います。地域住民はPCR検査の体制再確保しない公の病院をどのように思うのでしょうか?民間病院にもかかわらず、必死に対応いただいている民間病院と比べると、情けなくなります。

社会医療ニュースVol.46 No.545 2020年12月15日