もうはまだなりまだはもうなりというがクラスターの被害者は後期高齢者なのだ
ウイルスが生物かどうかわからないそうだが、経済がまるで生き物のようにのたうち回っているようにみえることがある。パンデミックが与えた経済的打撃は、経済活動の落ち込みともいえるのかもしれないが、その一方で、日経平均株価が30年ぶりに最高値を記録するという現象が起こっている。米国の株式も高騰していることをみると、相場の世界では実態経済とは無関係に感染収束後への思惑がうごめいているのだろう。金持ちはより金持ちになり、貧乏な人は一層困窮することになり、経済的格差が世界の行き先を暗部へと引きずり込もうとしているのではないかという感覚に襲われる。
ヒトの感情は、長期間の災害に耐えられなくなり心が崩れる危険があるものの、人類の歴史は苦難を乗り越えて継続してきたことを思えば、災害はいつか収まるはずだ。変異を繰り返し動物に寄生するウイルスは、怪人二十面相のように顔を変え時にあらぶれ、いつかは大人しくなるものの、どこかに潜んでいて犯行のチャンスを待ち続ける。犯罪が一時的に収束しても、なくならないのと同じことらしい。
ワクチンや決定的な治療薬が世界中で求められているが、正義の味方のようなヒーローであるゲームチェンジャーがあらわれるのは、今ではないような気がする。きっと事態が収束に向かいつつある時に、ヒョッコリあらわれるのではないかと夢想している今日この頃だ。
◎一時的な収束は可能であっても我慢比べのようなものなのでは
もう収束して欲しいと思うときはまだまだ先があり、まだ収束は先であると思えと予想よりは短い期間に収束するかもしれない。そんなことばかり考えていると株式相場の常套句「もうはまだなりまだはもうなり」なのかもしれないと思う。何か科学的な知見があるわけではないが、ペストもスペイン風邪もそのようなものだったのではないか。
人の思いと自然界の話はいつもちぐはぐな物語にしかならないことの方が、多いのではないかと落胆してしまう。ただ、いつかは収束することだけは確実で、希望を失わず、やれることをやり続けることが大切だと覚悟して、楽観的に生きるしかないと決めている。突然、我慢比べ大会に引き出されてしまったので、選択肢はあまりないような状況なのだろう。あと10か月後の冬に再拡大することも予想できるし、そうならないのかもしれない。結論は、わからないし、どのような可能性もあるということなんだろう。もしそうなら、一喜一憂しても、一時の喜怒哀楽の感情の高まりで行動し発言しても、事態を変えることは難しいということに行きつくはずだ。そう思うと、テレビの中で繰り返される国会論戦やニュースショーのようなものが茶番劇に映り、不快に思うことさえばかばかしく思える。
必要なのは、正確な情報、学習、そして自分の頭で考え、決めることだと思う。例えば「政府の指示に従う」と決断すればいいし、従わないならそうすればいい自由があると思う。ただ、他者に対する迷惑行為や攻撃的行動は、慎まなければならない。収束をじっと待つのは辛いことだが、いつかは収束することは歴史が証明していると思う。待てば海路の日和ありだ。
◎クラスターの半分以上は病院か高齢者施設なのだ
世界の感染者が1億人を超えたということは、約70人に1人が感染したことになる。緊急事態宣言が出されているので外出や密になる行為を控えてくれというのはよくわかる。ただ、若者の行動や飲食店の夜間営業について注意喚起がなされるが、クラスター発生の半数以上は病院か高齢者施設であるという事実が軽視されているのではないか、と思う。
陽性者であると確認された死亡者のうち60歳未満は4%以下で、80歳以上が約62%以上であるという厚労省の発生動向(速報値)に注目したい。さらに、80歳以上の人が感染すれば1割以上が死亡する現実を直視して欲しい。いいたいことは簡単だ。感染が収束するためには60歳未満の人の行動制限が必要なのはわかるが、感染により死亡するのは後期高齢者なのだということだ。
日本のすべての病院入院患者のうち75歳以上が53%を超えていることを考え合わせれば、このコロナウイルス感染症は後期高齢者のいのちを狙い撃ちしているといってもいいような気になる。
病院のことは、いろいろと報道されるものの、高齢者施設などについての内容がよく伝わらない。介護保険施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホーム、軽費老人ホームや養護老人ホーム、それに無認可の老人ホームなどを加えれば、200万人以上の高齢者が「高齢者施設等」で暮らしている。これらの施設等でクラスターが起これば利用者の死亡を真っ先に考えなければならないところに追い詰められていて、感染をやり過ごそうと必死に逼塞している事実をどの程度の国民が理解しているのであろう。
クラスターの被害者は後期高齢者なのだから、高齢者施設等に対する対応を強化するべきだろう。検査もワクチンも治療薬も高齢者施設等に最優先しないと命は守れない。もう一度いいたい。60歳未満の人は感染しても1千5百人に1人しか死亡しないが、80歳以上は感染すれば8人か9人に1人は確実に死亡しているのだと。
社会医療ニュースVol.47 No.547 2021年2月15日