福音に聴こえるクルーゲ局長の声明

世界中の人が「いつだ?」と思っていることを「もうすぐだ」と断言できることは、凄いです。

1月末の世界のトップニュースは「ハンス・クルーゲWHO欧州地域事務局長がAFP通信のインタビューに応じ、オミクロン株が猛威を振るう欧州で、パンデミックが収束に向かう可能性があるとする見解を示した」ことだと思います。

「3月までに欧州の人口の60%がオミクロン株に感染する可能性がある」が、その流行が落ち着けば「数週間から数か月は免疫が維持された状態になるだろう」「今年末頃にコロナが再び流行する可能性はある」ものの、「再流行してもパンデミックにならないかもしれない」との見方を示したのです。

また「オミクロン株が欧州全域に急速に広がる現状では、感染防止策より病院や学校、経済活動を守る取り組みを重視すべきだ」とし、「このウイルスは何度となく我々を驚かせており、引き続き慎重な対応が必要だ」と述べたというのです。

重要なことは、当然、今後も不測の事態は起こりかねないが、欧州のオミクロン株によるパンデミックは収束の方向性がみえたというメッセージを権威も責任もあるWHO欧州地域事務局長が示したことです。

この報道では、感染者が1日10万人を超えた日本のことには一切触れていませんし、あくまでも欧州での状況に過ぎないわけです。しかし、科学的な根拠のあるパンデミックの収束に関する見解は、発生以来2年間を経過して初めて「終盤に向かっていると考えられる」ということが貴重なのです。

クルーゲ局長の発言に注目する理由は、22カ月前になる一昨年11月19日に記者会見を開き3点について言明したからです。

第1は、「ロックダウンの可能性について言及し、マスクは万能ではないとしながらも、マスク着用率が95%以上であればロックダウンは不要で、60%未満であればロックダウンは避けられない」との考えを示し「各国の政治家は、早急に活動制限を解除しすぎる傾向にあると是正を促しつつも、妥結点としてマスク着用を徹底させることを最低限すべき」だとした点です。

第2にワクチンにより、新たな希望が生まれてきたことを歓迎しつつ「希望が現実になるまでには、全ての国がワクチンにアクセスでき、公正に行き渡るまでは安心できない」ので「小規模の発生で発症を隔離するため検査が重要」と言明した点です。

第3に子どもついて、11月20日は「世界こどもの日」であり「子どもは主要な感染ルートではないことを十分に考慮し、安易な学校閉鎖は授業の遅れや、精神・社会衛生上の悪影響をもたらす」ので「学校閉鎖を実行する場合は、社会的支援が必要な子ども十分にケアするよう」と発言した点です。

当時のわたしは「そうなんだ」と感心したことを覚えています。それ以降「95%以上の人がマスクをすればロックダウンは不要」「ワクチンが世界にいきわたるまで検査は必要」「子どもの学校閉鎖は悪影響をもたらす」という3点を呪文のように唱えてきたのです。わたしはこの2年間パンデミックについて、報道、著作物、インターネットなどで大量の情報に触れましたが、その中でもクルーゲ局長の発言は、福音のように聴こえるのです。

それにしてもオミクロン株は、凄い勢いです。いろいろなことを発言なさる人はいらっしゃいますが、結局、何を発言するかではなく誰が発言するかが重要なのです。

社会医療ニュースVol.48 No.559 2022年2月15日