エリザベス女王ご逝去

God save our gracious Queen,
Long live our noble Queen,
God save the Queen:
Send her victorious,
Happy and glorious,
Long to reign over us;
God save the Queen.

9月8日までの英国連邦諸国の事実上の国歌God Save The Queen(神よ女王を守り給え)の歌詞です。19日、ロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われたエリザベス2世女王の国葬では、QueenがKingに変わっていました。

神よ我らが慈悲深き
国王を守りたまえ
高貴なる国王の永らえんことを
神よ我らが国王を守りたまえ
勝利、幸福そして栄光を捧げよ
御代の永らえんことを
神よ我らが国王を守りたまえ

生涯にわたって強い使命感をもち続けたエリザベス2世女王陛下に、哀悼の誠をささげた日々が瞬く間に過ぎ去ろうとしていますが、何か大きな時代が終わった脱力感が拭えないままです。ウィンザー朝第4代国王、その他14か国の英連邦王国及び王室属領・海外領土の君主で、英国国教会の首長でもいらっしゃったことがわかるのが、英連邦諸国の通貨に肖像が刷り込まれていることです。

「私は皆さんすべての前に誓います。私の生涯が長くても短くても、そのすべてをあなた方と、私たちみんなが帰属する、偉大な英帝国のために尽くします」という言葉とともに在位70年を務めきられたエリザベス・アレクサンドラ・メアリー女王が安らかな眠りにつかれますよう、お祈りいたします。

英国第2の国歌といわれるのが I Vow To Thee, My Country(祖国よ我は汝に誓う)です。グスターヴ・ホルストの組曲『惑星』から最も有名な第4曲『木星』の中間部の旋律が用いられた名曲です。愛国歌といえば、エドワード・エルガーの『威風堂々』第1番中間部のメロディにアーサー・クリストファー・ベンソンが美しい詩をのせた、Land of Hope and Glory(希望と栄光の国)は行進曲の傑作で、世界中で愛されていると思います。

この1か月以上ゴッド・セイヴ・ザ・クィーンや、『木星』あるいは『威風堂々』が走馬灯のように頭を駆け巡り、集中できなくなっています。この70年間、女王は、あまりに大きな存在でした。

◎Netflixオリジナルシリーズ「ザ・クラウン」にかじりつく

女王は、スコットランド・アバディーシャーにあるバルモラル城でご逝去されましたが、毎年夏の避暑地であったこの城はエジンバラから車で2時間以上の距離にあり、周囲には建物がほとんどありません。1946年の夏、当時のフィリップ王子がエリザベス王女にこの場所でプロポーズしたそうです。

9月6日午前中にボリス・ジョンソン氏がバルモラルを訪れ辞表を提出し、午後には前日に保守党党首に就任したリズ・トラス首相の任命式が行われました。バルモラルで首相任命式が行われたのは137年前以来のことでだそうで、その2日後に女王は老衰でお隠れになったことになります。

訃報を知った日から英王室の大量のYouTubeや大河ドラマのような「ザ・クラウン」をみつづけています。このドラマの原作・脚本はピーター・モーガンが手掛けており、彼の出世作である06年の映画『クィーン』から派生したドラマだそうです。この「ザ・クラウン」シリーズは16年に配信開始され、現在までシーズン4までみることができます。シリーズ5の撮影は、21年6月に始まり2022年11月9日のリリースに向け調整されているらしいこと、シーズン6は、来年、配信される予定だという書き込みもありますので、期待しています。

◎このシリーズからの学び それは世界史のリアルだ

このシリーズは、在70年間というより女王の96年間のドラマです。シリーズ4までで40回、1回60分前後なので、全部観るのには合計40時間はかかります。放映されているのはダイアナ妃の離婚直前までなので、これから新たに20話付け加えられるので、全体で60回約60時間の超大作として歴史に残るでしょう。

シリーズ4まではみどころ満載というか、約100年の英国史、とりわけ英国王室史が再現されています。女王死去の暗号名は「ロンドン・ブリッジ」だったという報道が一部ありましたが、王位継承者などには暗号名がありブリッジが「あの世とこの世をつないでいる」という意味であることを知りました。

また、今月9日に99歳で亡くなった故エディンバラ公爵は、幼いころギリシャ国の王子でマウントバッテン家の家長であると理解していましたが、実はギリシャおよびデンマーク、ノルウェーの王家であるグリュックスブルク家出身。ギリシャ王国の第2代国王ゲオルギオス1世の四男アンドレアスとバッテンベルク家出身のアリキ(英語名:アリス)の長男として誕生したことを知りました。ベルグは山を意味するドイツ語で、叔父にあたる初代マウントバッテン伯爵が改名したことを学びました。

ヨーロッパの貴族は、重層的に婚姻関係で結ばれ第1次世界大戦は親戚同士の戦争で、王族は衰退し、第2次世界大戦でドイツの王族はナチス協力者で絶滅というか国際社会の表舞台から消えました。こうした状況で英王室が国王家として君臨できた陰には、あまりにも過酷な歴史があったのです。教会と貴族階級が支配したヨーロッパの封建制度は、ほとんど崩壊したにもかかわらず「君臨すれども支配せず」を原則としたと英王室は、現在まで生き残ることに成功した理由のひとつが、エリザベス2世女王陛下の貢献であったこと。

このシリーズでは、王配とよばれた夫のフィリップス殿下が宮殿内のドキメンタリー映像の公開を推進し、王室が積極的に情報公開を進め国民の支持を進める理由が克明に伝えられています。英王室の現在のYouTubeは世界中から注目されていますし、なんでも公開の対象になっているのでしょう。

現在上演中の映画『エリザベス 女王陛下の微笑み』も興味深いです。王室関連のおびただしいソーシャル・メディアへの登場は、世界中から注目されていますが、プライバシーは確保できているのかどうか、心配になることがあります。しかし、それが英国家と連邦への「義務」だと考えれているのだとすれば、後は国民に判断が委ねられているのだと改めて理解しました。

今さらながら、君主制を採用している国、大統領制の国、社会主義国などあり、権威主義国家、民主主義国家、全体主義国家という分類もあるということを考えてみると、わたしたちは「世界史のリアル」に向かい合う必要がありそうです。

社会医療ニュースVol.48 No.567 2022年10月15日