厚生省時代の回想

8月31日午後藤田医科大学医学研究科病院経営学・管理学専攻<専門職大学院>2期生14名の医師の方に講義しました。レクチャー、デスカッションと進み、最後に小松本悟先生が総評するというスケジュール。先生が総評でレクチャーの中で小山がなんども「ごめんなさい」といっていたことについて不思議がられてしまいました。わたしは「医療制度・政策が医療現場のやる気をそいではいけないと考えてきましたから、現場に申し訳ないという気持ちです」というような趣旨のことをお話ししました。

終了後、確かに単なる大学院の教員が「すいません」と謝るような立場にないので失礼したと反省しています。小松本先生と受講いただいた皆様にお詫び申し上げます。わたしは現場の対極に存在すると認識されている厚生労働省の試験研究機関の研究職に長年在籍したせいで、どちらかというと厚労の医系技官や事務官と仕事をする機会が多くありました。そんなことから今では、制度政策的にこうすれば医療現場はもう少し楽になるのではないかと考えるようになったのだと思います。

昭和から平成に時代が変わる前後10年間の厚生省には、国民生活の安定と福祉向上のため社会保障制度を前進させていこうという機運がありました。高齢化は進み、その財政負担は大きな課題でした。医療自体を確保するためには施設も人もお金も科学技術も必要で、どうしたら老人医療は確保できるのか、医療の質を担保する手段は?医療費を安定的に保障するにはどうすればよいのかなど基礎的なイシューについて熱い議論が毎夜繰り広げられていた時代です。

2000年前後の10年間は介護保険制度に関する議論が日本中で盛んでした。制度自体は何とか形ができても、魂を入れていくような作業が何年も続きました。このような時代に仕事をさせていただき、多くの方々と話し合えたことは、わたしの宝だと感謝しています。いつも思うのは、医療現場や介護現場は「やる気が落ちてないか」「何か問題が発生していないか」「制度政策的に対応できる課題はなにか」「DXを最大化して仕事を改善できないか」といったことを調べたり考えたり書いたりしています。

最近、厚労省の幹部職員との雑談で、「医療費を増加させないようにするのが仕事だ」という趣旨の発言をする方がいます。まだ、少数派ですが20年前では珍しかったのに、時代は変わったのですね。「社会保障は取締行政だけでは仕事はできない」と繰り返し教えてくれた立派な厚生省の先輩方をわたしは今でも尊敬しています。

社会医療ニュースVol.50 No.590 2024年9月15日