「青春って凄く蜜」と須江監督宣う
8月22日、第104回全国高校野球選手権大会決勝、仙台育英が下関国際を8対1でやぶり、東北勢として悲願の全国制覇をなしとげました。
優勝インタビューで仙台育英の須江航監督39歳は「青春って凄く蜜。そうゆうものが全てなくなった。活動していてもどこかでストップがかかる」と選手の苦境を端的に表現し「全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」と涙ながらに訴えました。
「今年の3年生は入学した時から、新型コロナウイルスの感染に翻弄されてきました。それを乗り越えての優勝。3年生にどんな言葉をかけたいですか」という質問に対して、須江監督は次のように答えたのです。
「入学どころか、たぶんおそらく中学校の卒業式もちゃんとできなくて。高校生活っていうのは、僕たち大人が過ごしてきた高校生活とは全く違うんです。青春って、凄く密なので。でもそういうことは全部ダメだ、ダメだと言われて。活動してても、どこかでストップがかかって、どこかでいつも止まってしまうような苦しい中で。でも本当にあきらめないでやってくれたこと、でもそれをさせてくれたのは僕たちだけじゃなくて、全国の高校生のみんなが本当にやってくれて。例えば、今日の下関国際さんもそうですけど、大阪桐蔭さんとか、そういう目標になるチームがあったから、どんなときでも、あきらめないで暗い中でも走っていけたので。本当に、すべての高校生の努力のたまものが、ただただ最後、僕たちがここに立ったというだけなので、ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」。
思い切りすべての高校生の皆様に拍手しました。ディスタンシングが必要で「蜜はダメ」といわれ続けて28カ月、全国の高校生は、傷つきながら苦闘してきたのです。自分のことだけではなく、他者を慮ることは大切なことで、人の成長過程で獲得する重要な思考ないし、感情なのではないかと思います。ただ、だれもが傷ついている状況では、他者への配慮の程度が低くなりすぎてしまうのでしょう。それにしても「青春って凄く蜜」という表現は、胸にササリました。
この決勝戦前日から、深紅の優勝旗の「白河の関越え」が東北勢の悲願だ、みたいな報道が飛びかいましたが、東北6県以外の人々には実感がないかもしれません。ただ、甲子園ファンにとっては、大ニュースで、筋書きがない勇壮なドラマなのです。過去にブルージェイズの菊地雄星選手も4年後輩のエンゼルスの大谷翔平選手も花巻東で甲子園出場しましたが、優勝は果たせませんでした。何しろ東北勢が100年ぶりの優勝を果たしたことを、わたしは心底喜んでいます。プロ野球を観戦することは稀ですが、春夏の甲子園は気になります。一生に一度の真剣勝負がさわやかに感じるのです。
辛いことがあるたびに自然や芸術に癒されてきましたが、スポーツにも大きな力があります。東京オリンピック・パラリンピックが多くの皆様の努力で開催されたにもかかわらず、何とも後味の悪いニュースにふれると、最初から最後まで「ケチがついてしまったな」と残念な気分になります。正々堂々、切磋琢磨というかフェアプレーの精神がスポーツの醍醐味だと思います。甲子園はその象徴として、いくつになっても憧れであり、大きな希望であり、そして壮大なドラマが繰り広げられる瞬間なのです。
スポーツにも、事業にも、人生にも勝ち負けが伴います。勝利自体が目的化されますが、常勝の世界はありません。「負けるが勝ち」とはいいませんが、勝利至上主義は必ず行き詰まりますね。
社会医療ニュースVol.48 No.566 2022年9月15日