リーダーシップの欠如かマネジメント問題なのかを見極めてリスタートする

 

穏やかなゴールデンウイークも終わり、長年のマスクの重圧からも解放され5類移行もなしとげられた今、なぜか世の中が全面的に再始動し始めたように感じます。4年前に戻りつつあるのか、それともまったく違った方向に進みだしたのかといえば、明らかに4年前とは違うように思います。4年前のマネジメント方式のままでは時代にマッチできないというか、これまでのやり方を変えてみる必要があるのではないかと気づく場面に毎日のように遭遇します。

通勤電車に乗ると、社内の広告が半減し、新聞を読んでいる人が珍しく、大半の人がスマホをみています。ミーティングはほとんどZOOMですし、テレワークが定着しました。かつてモーレツ社員などと呼ばれたタイプの人々が減り、主流はワーク・ライフ・バランス重視が定着したようにみえます。それに伴い目標達成のためにがむしゃらに突き進む鬼のようなリーダーは時代遅れで、働き手の不足が深刻で「強くでればやめられてしまう」「やめられることで評価が下がる」「部下が何を考えているかわからない」ということを話す中間管理者が増えたように思います。

表面的なことでしかありませんが、どうもこれまでのヒトや組織のマネジメントが通用しなくなっているのではないかと気になります。産業界では株主との対話、ステークホールダーとのコミュニケーション、社内の人間関係の再構築、そして人々のリ・スキリングの重要性が叫ばれています。小中学校教員や医療従事者あるいは物流業界の長時間労働が問題視されていますが、それは、この分野のマネジメント・システム自体を変革しない限り達成できないのではないでしょうか。

◎どこに問題があるのか

何か大きな問題や課題に対応する必要がある場合、まず「これはリーダーシップの欠如なのか、マネジメント上の問題なのか」と考えることを習慣化しています。マネジメントの問題であれば、仕組みや枠組みを変更して、より良いシステムに転換することが必要です。他方、リーダーシップの欠如の場合は「リーダー」を変えることが検討されます。ただし、トップのリーダーシップの欠如が明らかで、何らかの事情でトップを変えられない状況ではトップに行動変容してもらうしか方法がありません。

長年、正答のない「リーダーシップかマネジメントか」を考えてきた体験では、どちらか片方であれば解決法を考えることができても、両方である場合は、即効薬はなく長時間の話し合いや集団学習を重ねるという方法がみつからない場合が多かったと思います。

例えば、政治や行政の世界の議論をみていると「リーダーのリーダーシップの問題」としか考えられない場合や、明らかに「マネジメント・システム上の欠陥」である場合が少なくない事案が見受けられます。それにもかかわらず、マネジメントやリーダーシップのミスに関して、徹底的な責任追及が行われることが少ないのは、日本の政治風土というか全てを白日の下にさらすことはせず、なにか曖昧な世界が好まれているのかもしれません。

しかし、リーダーシップなのかマネジメントの問題なのかという分析は、かなり有効だと自負しています。それは報告・連絡・相談というホウレンソウを徹底し、高速でPDCAを回すだけのマネジメントでは解決できないリーダーシップの問題に何度も関わったからかもしれません。くどくなりますがリーダーシップの欠如をマネジメントの徹底では賄えませんし、マネジメントの欠陥をリーダーシップでは補えないからにほかなりません。

◎経営学の大議論

リーダーシップなのかマネジメントなのかという議論は、世界的に著名な経営学者によって何度も議論されてきた命題でもあります。この命題は状況により解答が違うかもしれませんし、何しろ変数が多く何冊本を読んでも正答はないのだと思います。なぜかといえば、過去に起こったことについて分析を加えることはできても、将来起こるであろうことに対しては分析しようがないからです。もっと簡潔にいえば歴史に「もし」を語り始めることはフィクションでしかないからです。

ただし、これからリスタートする日本で再検討しなければならないトップ・イシューはリーダーシップなのだということを強く感じます。リーダーシップ理論は各種ありますし、リーダー論なら山のようにあります。その全てで「自信がないリーダーシップ」ということを読んだ記憶がありません。たったひとつの真実は、リーダーシップは自信に裏打ちされているということではないかと思います。だとすれば、不安だとか自信がないといって「やらない、かかわらない、知らんぷりする、学習しない」という人はリーダーシップが発揮できない可能性が高いことになります。

これに関してはマネジメントにも共通していると思います。マネジメントを成功させるには学習に積極的にかかわり、人の話を傾聴して肯定的に対処し、楽観的に進捗する必要があります。ですからリーダーシップのマネジメントもマネジメントのリーダーシップも必要なのです。

それでも経営学の分野ではマネジメントとリーダーシップは個別と考えています。今、これまでのマネジメントを徹底的に点検し、リーダーシップを徹底的に強化することが必要なのではないでしょうか。

社会医療ニュースVol.49 No574 2023年5月15日