介護DXが遅れているのではないかと思うならしっかり学習してトップダウンで着実に進める
マイクロソフトのCopilotを利用しての壁打ちブレインストーミングは楽しい。医療、介護、教育そして栄養DXとAIに関して何か基礎的な知識があるわけでもなく、氾濫するICT用語を理解するだけでも相当の時間がかかります。
好奇心というか新しもの好きで、なんでも調べまわること自体は苦にならない。情報収集は、新聞、雑誌、本、Webサイト、生成AIのChatGPT4などだが、実は誰かの話を聴いたり対話することが最も重要だと思います。DXやAI関連書籍は、大きな書店に行けば沢山の種類があります。2023年に約31種類、24年は4月までに10種類だとCopilotが答えてくれました。
さらに「医療・介護DXやAIに関する情報」を尋ねた結果「デジタル技術を活用して医療や介護の現場を変革する取り組みです。AIやIoT、ICTなどのデジタル技術を導入することで、業務効率化や生産性向上を図ることが可能で、以下のようなメリットが期待されています」ということで、事務作業の自動化・利用者の遠隔見守り・ロボットによる身体介助・介護スタッフのストレス低減・感染症の予防・適切な介護サービスの提供・SDGsへの貢献が列挙されています。
「AIの活用により、医療機器や検査装置の高度化が進んでおり、画像診断や病理、創薬などにAIが活用されています。また、医療情報ネットワークの構築により、医療情報の共有や効率的な診療が可能となっています。医療・介護DXやAIの導入により、より効率的で質の高い医療や介護が提供されることが期待されています」とのことです。
◎3カ月ごとに新情報 対応に遅れが生じる
書店に並ぶ書籍は、少なくとも2カ月以上前の情報に基づいています。正直いって1年前のDXやAI関連書籍は役立たないこともあります。新聞や専門雑誌は、情報伝達は早いのですが、報道から事実だけを拾い出し情報元を確認する必要があります。生成AIのChatGPT4だけでも各種ありますので、比較検討している専門雑誌に頼らざるをえません。各社とも無料のお試し版があり、2週間後や1カ月後から自動的に課金されるものまであります。特に、画像生成分野は飛躍的に進化しており、今後とも新しいAIが今年中にリリースされるはずです。
医療や介護のDXやAIも日進月歩というか、どんなAIがでてくるのかとか、AI搭載のロボットは製品数も価格も変化するはずなので、どの時点で導入するのかという判断は、誰にとっても難しいと思います。
ただ、DXやAIを単なるコストと考えていると、いつまでたっても決断できません。どこまでも先行投資だと考えないと、一歩も進まない病院や介護保険事業者の経営者や管理者の多くの方々の話を聴いてきました。結論として、正答がない世界で試行錯誤を繰り返す場面なのではないでしょうか。決断するべきなのは、経営者だということだけはよく理解しているつもりです。
◎学習する組織づくりとトップダウンで進める
人手不足という、とてつもない難題があります。だからDXで業務効率化と生産性向上を進める必要があります。何しろ業務を効率化してスタッフのストレス低減、適切な介護サービスの提供による質の確保と向上というパーパスを達成したいのです。
DXの課題には、知識・ノウハウの不足、予算不足、費用対効果の不明瞭さ・分かりにくさなどを指摘する意見が多数ありますが、そんなこといってみたところで一歩も進まないのではないでしょうか。DXは業務変革ですので担当者が行うものではなく、経営者が本気にならないとどうにもなりません。ただ、経営者が学習せず騒ぎまわっているだけでは、事態は悪い方向に向かうのです。
IT人材が確保できなので進まないというのは、単なる言い訳です。少し時間はかかるかもしれませんが、まず経営者が「人手不足解消・ベースアップ確保のために職員全員で勉強しよう」と繰り返し宣言することが大事です。全国の大病院の多くにIT人材はいますが、病院のマネジメントに精通したIT技術者は僅かで、使いこなせる経営者がいないと、単なる管理業務をこなしているだけでコストがかかるだけなのです。
まず、経営トップが学習することです。そして、組織自体を学習する組織にしていくことなのです。つまらないことですが、ゲームやロボット好きはどこの組織にもいます。音声入力でCopilotを使い合ったり、録音・文字おこし・要約・議事録の作成を数分で試したり、各種言語の翻訳を日常化することで海外人材とコミュニケーションを深めたり、会議資料を生成AIで作成したり、給与・人事・労務関連業務や契約書関係のシステム化や、各種業務マニュアルのクラウド化をはじめ、簡単に取り組めることはいくらでもあります。全員がスマホで対応できることは前提ですが、あわてることはありません。
今年中に基本方針を固め、来年度中に全面的に導入できれば良いのですから、何しろ急がば回れのごとく、組織メンバー全員で取り組んでいくことを確認した上で情報収集と学習を続けましょう。
今、大事なことは、しっかり学習してトップダウンで着実に進めるための職員全体のチームビルディングだと思います。実は、何度も失敗を体験しましたが、DXは職員全体で進めない限り成功しません。一度でも、小さな成功体験を組織で共有できれば、つぎのターゲットが明確になり、取り組んでみたいという意欲がわいてくるものです。
少し出遅れた感があるかもしれませんが、カエル飛びしてでもいつか追いつき・追い越せばいいだけです。できないことはできませんので、今、できることは何かということを考えて行動するのが経営者だと思います。
DXやAIは、業務の省力化、プロセスの最適化、コミュニケーションツールの活用を進めますので、モニタリングやセンサリングはDXの得意分野ですし、イノベーションの成果は目に見えるものなのです。
介護現場にDXに取り組む体力がないという雰囲気があることは、認めます。取り組みを始めない限り、体力があってもなくても結果は同じことです。できることはいくらでもあるのですから、自らの努力で学習し組織全体で対応して欲しいのです。
社会医療ニュースVol.50 No.586 2024年5月15日