何もかもやる気失せれば打つ手なし 今ここで気を取りなおし夏こえよ!
水田に青々とした若苗が並ぶ美しい6月の世の空気が悪い。
第3次世界大戦への恐怖に加えて、巨大な権威主義の中国とロシアの大国連合の脅威、米国発の自由至上主義とヨーロッパの大衆迎合政治化による国際協調力の低下。そして、世界中で起きている自然災害と気象変動は、明るいはずの未来への光りを大きく遮っています。
日本では、賃上げと物価高が大問題になっていますが、日本円発の通貨危機の発生という時限爆弾を抱えているのかもしれないのです。日本の大企業は最高利益額を更新して、日本の株式相場は活況ですが、政治不信に加えて、日本自動車産業の安全性スキャンダルは、国際競争力を失い続けている日本の政治的経済的地位をさらに低下させるかもしれない危惧があります。
ここまで、悲観的見解ばかりで申し訳ありませんが、「ポジティブシンキングで乗り越えよう」などという状況にないと思います。長期間のパンデミックによる行動制限は、人々の暮らしや働き方、そして価値観や生き方を大きく変革させ、感染症への恐怖感が低下した現在では、過去の常識が通用しなくなっているのではないでしょうか。
2020年に入学した大学生のほとんどは、順調ならば4年生になり就職が決まったか就活中です。彼らは高等学校の卒業式も大学の入学式も未経験なのです。「先のことは分かりません」「上手く働けるのか自信がありません」「労働力不足で賃上げしているらしいですが、人間関係に悩まないで済む楽しい職場なのでしょうか」などと真剣に話してくれる4年生に対し、心から「大丈夫だよ」などと言うのが無責任かもしれないと考えることがあります。
大学に行って、良い企業に入り、一生懸命働いて、生涯学習を続け、家族をつくり・・・、みたいなことしかわかっていなのでは、寄り添ってもいないし親身にもなっていないのだと、教員として落ち込むことがしばしばなのです。
病院や社会福祉施設で働いている各種の職業人に「こんな研修会あるよ」とか「大学院修士課程で勉強してみたら」と勧誘することが少なくありませんが、時間や費用、家族のことなどで「今は無理」と即答されることが多くなったように思えます。例えば、管理栄養士さんに「臨床栄養師養成のコースがあり、Zoomでも受けられます」などと推奨しても、9割方は感心すら示してくれないのです。状況が何か変わったのだと思うしかありません。
◎意欲的に学習するより自分の生活が最優先?
最近はDXとか生成AIに関する職員教育について、いろいろな人々と話し合う機会が増えていますが、意外なことに研修担当者は研修参加意欲が低下しており、業務として必要不可欠な研修以外は敬遠される傾向が明らかなそうです。理由は、よくわかりません。
子育て世代は制約が伴うことは理解できますが、それだけが原因ではなさそうです。医療従事者や福祉分野の従事者の多くが何らかのライセンスを保持して仕事をしています。ライセンスで仕事をしている人々は、免許や資格の更新時に必要な研修などには参加されますが、それ以外の研修を軽視しているようにも思います。
最近、リスキリングの必要性が強調されていますが、国家資格保持者はリスキリングなどということには、関心が薄い傾向があるそうです。見出しの「何もかもやる気失せれば打つ手なし」は、研修担当者との話し合いの場で「研修会に意欲的に参加してもらうにはどうするか」というより「仕事に意欲がわく研修会が必要なんじゃないか」というボヤキから口ずさんだことです。
今の28歳以上37歳ぐらいの「ゆとり世代」の方々に対し昭和のオジサンたちは「無気力、無関心、無感動にどう対応するか」みたいなことを、盛んに話題にしていましたよね。欧米でも現在は、ゆとり世代の次のZ世代の無党派が政治を左右するパワーを発揮しています。無気力、無関心、無感動は、昭和のオジサン世代からみればそうみえるだけで、将来に対する期待とか、希望とかを熱く語らないだけなのでしょう。
◎報酬改定がベースアップ分だけだから経営は困窮する
6月から診療報酬改定が行われましたが、医療現場からは「マイナス改定でしかない」という不満が巻き起こっています。前年度の決算では、パンデミック関連補助金が半減され多くの病院が損益を計上しました。実際には、ここ4年間の医療機関利用の1日当たり実人数が減少しているのです。さらに今年度は、期首から関連補助金がほとんどなくなりますので、年間収支は悪化することが予想できます。
介護報酬改定も同じような状況ですが、実は人手不足が深刻で事業の廃止・休止が増加しています。通所介護事業を廃止した。短期入所部門を休止中、おまけに1日当たりの実利用人数が減少し、損失計上の組織体が少なくありません。
今年度の同時改定は、ベースアップ改定ですので、それ以外で優遇された部分は僅かしかないのです。何とか対策を検討していますが、状況を好転させる妙案はありません。経営層は、何とかしないといけないので検討を重ねていますが、職員がやる気に充ちているという状況にはみえません。
今ここで、なんとか気を取りなおし酷暑を超えたいと願いますが、空気が悪すぎなことは否定できません。
社会医療ニュースVol.50 No.587 2024年6月15日