診療報酬を引き上げないと公立病院はいずれ廃院になる

インフルエンザに注意し、雪山を各地で愛でながら全国飛び回っています。結構楽しいはずなのですが、旅先のご依頼案件は正直手に負えません。

財務諸表で確認するのですが、債務超過で3年以上経常利益率がマイナスな経営体をどうにかするのは至難です。「銀行から経営コンサルタントを紹介されて経営改善中」「後継者がいないので今のうちにどこかに病院を売却したい」「どちらにも体力があるわけではないが連携法人化したい」などという話を連続的に20件近く聴くと逃げ出したくなります。逆に「必死に頑張って今期は1%利益計上できる」と聴くと幸福感が沸き上がります。

病院管理学の実務を研究して病院経営についてなんだかんだ関与してきましたが、今までの45年間の経験で最悪です。2024年度の経営指標が各種団体から公表されているので職業柄拝見していますが、病院経営を継続できそうな数値ではありません。

特に深刻なのは営業(医業・事業)利益がマイナスなことです。例えば、入院と外来収益の合計から人件費・材料費・経費・減価償却費などの費用を差し引くとマイナスとなります。

簿記会計が分からなくても構いませんが、こんな状態がすでに3年間継続しても債務超過にならなければ生き残れますが、債務超過になるとどのようなにやり繰りしても5年程度で廃業することになります。ただし、経営規模が大きくなると銀行などが助けてくれるというか、負債規模が大きく銀行自体が共倒れする危険があるので金利だけでも支払えるなら返済を猶予しますなどということになる場合もあります。

これは民間の常識ですが、公立病院となると話が突然変わります。公立病院には多額の租税がつぎ込まれていると一般には理解されていますが、何もめちゃくちゃな経営をしているわけではなく公営企業体としてきちっと運営されています。

病院を別にすれば上下水道、交通、市場、港湾など多数の公営企業体がありますが赤字体質ではありません。なぜなら、赤字になると消費者に価格転嫁できるからです。

公立病院の収益のほとんどは診療報酬と窓口収益です。公立病院が損益計上していても利用者に価格転嫁できないのでどうしようもありません。こうなると診療報酬を引き上げないと公立病院はいずれ廃院になる宿命なのです。

こんなわかりきったことを、わからないふりしてやり過ごそうとしているのはよくありません。診療報酬を引き上げなければ職員の賃上げは確実にできないことを、本当に理解して欲しいのです。

社会医療ニュースVol.51 No.595 2025年2月15日