《ローエングリン》の結婚行進曲の評価
誠の心に導かれ、愛の祝福を
受けてください!
強き勇気で愛を勝ち取り、
幸せな夫婦になるのです!
若き戦士よ!お進みください!
若きお花よ!お進みください!
にぎやかな宴はもうおしまい。
心の歓びを手にしてください!
香り高き寝室は愛にかざられ、
光を逃れた者を迎え入れます。
誠の心に導かれ、愛の祝福を
受けてください!
強き勇気と清らかな愛で、
幸せな夫婦になるのです!
どなたでもご存じの「結婚行進曲」の意訳です。正確にはワーグナーの楽劇《ローエングリン》第3幕第1場の華々しい前奏曲のあとの「婚礼の合唱」です。
物語は、ブラバント公国の世継ぎゴットフリートが行方不明になり、姉エルザに弟殺しの疑いがあるとしてハインリヒ王にテルラムント伯爵が訴えます。王は公女エルザを呼び出し、釈明を促すと、エルザは夢見心地の様子で、神に遣わされた騎士が自分の潔白を証明するために戦ってくれると話す。王の伝令が騎士を呼び出す。すると白鳥が曳く小舟に乗って騎士が登場するのです。
騎士は、自分がエルザの夫となり領地を守ること、自分の身元や名前を決して尋ねてはならないことを告げ、エルザはこれを承諾。「神明裁判」によって、テルラムント伯爵と騎士は決闘し、騎士が勝利します。
こうして騎士と公女であるエルザは結婚することになります。騎士はエルザに疑いの心を持たないように再三再四説いて聴かせますが、次第に不安が募り、夫に対する疑念にも似た気持ちは抑えられず、とうとう騎士の素性を問い詰めてしまいます。すると、永遠のしあわせは瞬時に奪われてしまうのです。
騎士は王の前で、「私は、はるか彼方にあるモンサルヴァート城で聖杯を守護するパルジファル王の息子、ローエングリンだ」と名乗ります。そこに白鳥が小舟を曳いて迎えにやってきます。ローエングリンは角笛と刀と指輪をエルザに手渡しますが、指輪だけは丁重にエルザの手の中に置き静かに祈りを捧げます。すると、白鳥が人間に姿を変え、行方不明だった弟が現れます。小舟に乗ったローエングリンは悄然として去り、エルザもまた弟のゴットフリート公の腕の中で息絶えるのです。
この物語は、中世の騎士道や愛情をテーマにしていますが、愛と犠牲、秘密と真実、信仰と使命など、さまざまなテーマを探求しながら、感動的な結末を迎えます。この《ローエングリン》を熱愛したのが、若きバイエルン国王ルートヴィヒⅡ世です。
彼は、1869年からノイシュバンシュタイン城の建設を本格的に始め、17年間建築が続けられましたが国王の死によって中止されました。城の構想の起点が、ワーグナーの楽劇《タンホイザー》と《ローエングリン》にあったことは、一度でもこの「新白鳥城」を見学すれば理解できます。
ノイシュバンシュタイン城とローエングリンの関係は、両者がバイエルンの歴史や文化において重要な要素であり、城はルートヴィヒⅡ世の浪漫主義的な理想を具現化した建造物であり、その建築や内装には中世の騎士物語や伝説からの影響を色濃く映し出しているという解説が、旅行案内書に数多くあります。一方、ローエングリンの物語は、中世の騎士道をテーマにしていますが、ワーグナーのその後の4部大作《ニーベルンゲンの指輪》や《パルジファル》といった一連の作品のベースであり、偉大な楽劇の祖としてのワーグナーの評価を不動のものにした作品だと思います。
「結婚行進曲」は、教会のオルガンが奏でる場合が多く、合唱曲として披露されることはまれになってしまいましたが、この合唱はあまりに素晴らしいものなのです。
社会医療ニュースVol.50 No.584 2024年3月15日