ワーグナーとヴェルディの後継者プッチーニ

ジャコモ・プッチーニは、今年没後百年を向けえるので、世界中で≪ラ・ボエーム≫≪トスカ≫≪蝶々夫人≫などの上演が目白押しです。彼の第3作目の≪マノン・レスコー≫は大成功となったばかりか、優れた台本作家ルイージ・イッリカとジュゼッペ・ジャコーザの協力チームがその後もすばらしい物語を醸し出し、大ブレイクしています。

≪マノン・レスコー≫では、近衛軍曹のデ・グリューが、修道院に入ることになっていた美しいマノンに一目惚れするところからはじまります。好色な大蔵大臣ジェロントがマノン誘拐を企んでいることを知ったデ・グリューは、マノンと2人でパリに駆け落ちしたものの、マノンはパリでの貧乏暮らしに飽き足らずジェロントの愛妾になるのです。贅沢だが愛のない生活にやがて空しさを覚えたマノンの前にデ・グリューが現れ、愛を確かめ合う。そこをジェロントに目撃され、マノンは姦通の罪で流罪。彼は、マノンへの熱い愛がゆえに流刑地への同行を懇願する。2人は流刑地アメリカでも問題を起こし脱走、荒野をさまよう。飢えと渇きに衰弱したマノンは、絶望するデ・グリューに永遠の愛を誓い、その腕に抱かれて息絶えて幕となります。

≪ラ・ボエーム≫は貧しい若い芸術家たちの夢を追いながら生きる姿を描いており、恋愛や友情、貧乏や苦労といったテーマが取り上げられています。悲劇の主人公「ミミの死」の場面は感動的で、多くの人々の涙を誘います。

≪トスカ≫は政治的な陰謀と愛の物語が絡み合った作品で、情熱的な音楽とドラマティックな展開が特徴です。登場人物の心情の変化や緊迫感が聴衆を引き込みます。歌姫トスカをどんな卑怯な手をつかってもわがものにしようとするスカルピア警視総監が「この時を待っていたのだ」と歌うのは、権力者のどす黒い欲情をリアルに表現しています。

≪蝶々夫人≫は日本の文化と西洋の文化の交差する物語で、日本の若い女性がアメリカ人の海軍士官との結婚までと、帰国それを待ち続ける心情、そして裏切りと自死を果たすまでが描かれています。「越後獅子」「さくらさくら」「お江戸日本橋」などの日本音楽の要素や美しい旋律が魅力です。

最後のオペラ≪トゥーランドット≫は未完成のまま遺され、そのフィナーレは、彼の遺稿も参考にしてフランコ・アルファーノが補筆したものの、彼の補作の大部分は世界初演時の指揮者アルトゥール・トスカニーニが冗長と見なして「マエストロはここまでしか作曲しなかった」といってカットしたため、以後も公演では演奏されないことも多いようです。

プッチーニの音楽は、イタリア・オペラの伝統にのっとり、劇的な展開と緻密な描写的表現、そのために繰り出される転調やコード進行、オーケストレーションの豊かさが特徴的で、とりわけ旋律の忘れがたい美しさは特筆に価すると絶賛できます。

来年のニューイヤーコンサートを指揮する予定のイタリアの巨匠リッカルド・ムーティは、長いキャリアの中でプッチーニを数回しか取り上げておらず、モーツアルトのオペラのほうが好きなんだと思います。ヘルベルト・フォン・カラヤンは、ワーグナーやヴェルディに次ぎ、プッチーニが得意で多くの録音を残していますし、2本のオペラ映画を製作するなど、強いこだわりをみせました。

プッチーニのオペラは情熱的なメロディーやドラマティックな要素が際立っています。ワーグナーやヴェルディの後継者はプッチーニなのだと、勝手に思い込んでいます。年末までプッチーニの全作品を堪能したいのです。

社会医療ニュースVol.50 No.586 2024年5月15日