自動車産業はCASE時代に突入し産業と社会保障制度の連携が必要
走行時に二酸化炭素を排出しない電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)、外部から充電もできるハイブリッド自動車(PHV)をゼロエミッションビークル(ZEV)と呼ぶそうです。正確に確認できませんが、米国も中国も、そしてカナダも日本も2035年までにガソリン車の新車販売を禁止することになり、英国は30年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止し、35年までにハイブリッド車も禁止する方針とのことです。
トヨタ自動車株式会社のHPに“テクノロジー”のタグがあり、その中に“CASE”があったので開いてみるとつぎのように書いてあります。
【Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)といった「CASE」と呼ばれる新しい領域で技術革新が進む中、クルマの概念は大きく変わろうとしています。トヨタは、モビリティに関わるあらゆるサービスを提供し多様なニーズにお応えできる「モビリティカンパニー」として、「未来のモビリティ社会」の実現に取り組んでいます。】
自動運転、自動車の共同利用、電動化はわかるような気がしますが、あらゆるソフトウェアとつながるというイメージが今一つ伝わってこないのです。おっしゃりたいことは、一昔前まで電子頭脳といったAI、インターネット上のあらゆる情報を利用できるクラウド、そして最近の言葉である各種プラットフォームと結びつくということのようです。
自動車業界のことはうといのですが、6月にスズキの鈴木修社長が「電気自動車のことはわからない」という趣旨を表明して退任されたという記事がありました。8月6日には「ホンダの早期退職優遇制度に2000名超が応募し、55歳以上64歳未満の国内正社員の約5%に相当する削減数となりました」という記事が、18日には日産が米国市場で新型Zを発売するというニュースも流れました。
20日には「中国インターネット検索大手の百度(バイドゥ、Baidu)は、運転手を必要としない完全自動運転レベル5の機能を備えた『ロボットカー』を発表した」というWebニュースに触れたのです。
今季限りでF1から撤退するホンダは、社員を入れ替えてまでエンジンから電気に大変革し生まれ変わるつもりなのでしょう。世界の自動車産業は、一斉にCASE時代に突入し、熾烈な競争に突入することになることは確実なのです。
◎熾烈なCASE合戦に負けないでいてください
18年の自動車製造業の製造品出荷額等は62兆3千億円、全製造業の製造品出荷額等に占める自動車製造業の割合は18.8%で、自動車輸出金額は15.9兆円、自動車関連産業の就業人口は542万人です。自動車産業は、日本経済を支える重要な基幹産業であることは明らかです。
自動車関連就業人口のうち、製造部門は91万人強ですが、資材部門43万人、販売整備部門が103万人、利用部門約270万人、関連部門約35万人を合わせると、日本の全就業者の8.1%に達すると報告されています。
自動車関連産業が熾烈な国際競争に「負けない」ために、今後とも国民の一人として協力したいと思います。理由は、医療や介護を含めた社会保障制度は「完全雇用と若干の経済成長が大前提」で「実態経済の現実を直視していないと社会保障は守れない」のだという教育を受けたからです。
経営的いいかたをすれば、自動車産業は日本のプロフィットセンターで、医療や福祉はコストセンターとして相互にしっかり連携して、国民生活の維持と安定に寄与するということが基本的な日本の「かたち」だと思い込んでいます。
◎医療・福祉の就業者数は最大就業人口に成長する
総務省の「労働力調査」によると20年の「医療福祉」就労人口は862万人で、就業人口の12.9%を占めています。産業別人口をみると第1位が「小売業」第2位が「製造業」で、ともに1千万人台となっており「医療福祉」は第3位です。ただし、女性の雇用者数でみると640万人に達し第1位となっています。
労働政策研究・研修機構の「労働力需給の推計」をながめると、25年に「医療福祉」は908万人、40年に974万人に達すると推計されています。将来人口が減少する過程で一方的に就業者人口が増加するのは、実は「医療福祉」だけで、40年以降は製造業を抜き第1位の就業者となることは確実だと読み取れます。
「医療福祉」の就業者数は96年に400万人でしたので、約25年で倍増し、これからも増加することが確実だと推計されていることを、どのように認識し、何を考え、どのように対処すればよいのでしょうか。
「医療福祉」の就業者数が増加することを当然視することは可能ですが、労働集約型産業で就業人数が増加すれば人件費が発生し「医療福祉」分野への国民負担も増加し、それらを支える仕組みと経済が円滑に機能する必要があります。これこそが必然だと、わたしは思います。
日本人の生活水準が国際社会で若干低下しても、平和と連帯が維持できれば良いという覚悟が共有化されれば選択肢はあると思いますが、日本の実体経済の分野で世界と競争しなくても良いという理屈は導き出せません。
このイシューは、一人ひとりの生涯にとっても、産業や経済にとっても、社会保障にとっても、そして日本の文化にとっても「国のかたち」追求する試金石なのではないかと思うのです。
社会医療ニュースVol.47 No.554 2021年9月15日