ソサエティ5.0とか第4次産業革命だといわれても実感できないのは誰のせいか?
以前からメディアに登場して気になっていた「ソサエティ5.0」とか「第4次産業革命」について調べてみました。サイトにはたくさんの情報がありますが、まずは政府系、動画や文書をチェックしてみます。
まず、内閣府HPには「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」であり、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された、とあります。
「これまでの情報社会(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。人が行う能力に限界があるため、あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担であったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約がありました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対して様々な制約があり、十分に対応することが困難でした」「Society 5.0で実現する社会は、IoTで全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります」。
つぎに第4次産業革命ですが、これは「インダストリー4.0」とも呼ばれる設計や生産、物流、保守といった産業の営みをデジタル化し、新たな価値を創出することが主なコンセプトになっています。水力や蒸気機関による第1次産業革命、電力を用いた大量生産である第2次産業革命、70年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である第3次産業革命に続く、IT技術を駆使し、製造業を中心にさまざまな変革を促そうとする一種の概念です。
内閣府のHPには「こうした技術革新により、➀大量生産・画一的サービス提供から個々にカスタマイズされた生産・サービスの提供、②既に存在している資源・資産の効率的な活用、③AIやロボットによる、従来人間によって行われていた労働の補助・代替などが可能となる。企業などの生産者側からみれば、これまでの財・サービスの生産・提供の在り方が大きく変化し、生産の効率性が飛躍的に向上する可能性があるほか、消費者側からみれば、既存の財・サービスを今までよりも低価格で好きな時に適量購入できるだけでなく、潜在的に欲していた新しい財・サービスをも享受できることが期待される」とあります。
◎バラ色のAIによる仮想空間は社会をどのようなに変えるのか
内閣府のHPをみた後で総務省、通産省や文科省などの政府系のHPなどを検索してみると、大量の文章がみつかります。身近な事柄では、各種のAI家電、自動運転による無人走行バス、ドローン宅配、スマート農業、オンライン診療、会計クラウド、仮想空間などなどで、どれも夢があって嬉しくなります。AI、IoT、ビックデータ、シェリングエコノミーなどの各種イノベーションにより、ヒト、モノ、機械、技術、システム、企業や行政などが縦横無尽に結びついて、極端な自動化とかコネクティビティによる産業革新が進んでいくのだそうです。
これらのうちAIによる仮想空間は興味が尽きませんよね。仮想空間では、誰もが自らが思い描く自分になりきれるのです。ばかばかしいかもしれないと考える方も少なくないかもしれませんが、オーケストラの指揮者にも、好きなスポーツのプロ級選手にも、あこがれの顔や身体にもあらゆるヒーローにもなれるのです。
このような仮想空間をスティーブン・スピルバーグ監督の映画「レディ・プレイヤー1」で映像としてスクリーンに映し出してくれますし、ケヴィン・ケリー氏は「5000日後の世界」の中で「すべてがAIと接続された『ミラーワールド』が訪れる」と表現し、いずれ「拡張現実の世界」が出現すると書いているのです。
◎日本は後れを取っているが生産性向上はこれしかない
実は、政府のいう「成長戦略」の中核が第4次産業革命で、この分野を伸ばすことにより40兆円程度の付加価値が作りだせるそうなのだ」と説明されているのです。ただ、アメリカやドイツあるいは中国と比べてみると、後塵を拝しており、今後さらに差をつけられそうだという注意喚起というか、悲鳴のような分析結果も示されています。
ただし、一方で「供給面から第4次産業革命への影響を考えると、いくつかの経路を通じて生産性の向上に寄与することが期待される」というような表現が、各省庁のHPに堂々と掲載されているのです。
AI開発では世界中が熾烈な競争を繰り広げ経済的覇権取得にしのぎを削っており、競争に負けることになれば日本の将来は暗澹たるものであるということを国民に伝えたいのでしょう。皆様は実感できますか?
社会医療ニュースVol.48 No.560 2022年3月15日