今、早急に考えなくてはいけないのは医療福祉レジリエント計画ではないか

宇宙飛行士の野口聡一さんが10月31日に搭乗予定の民間宇宙船が、RESILIENCEと命名されたという報道がありました。スペースX社が開発した民間の宇宙船「クルードラゴン」は、宇宙飛行士が地球と国際宇宙ステーションを往復するために開発されたもので、その1号機には野口さんら4人の飛行士が搭乗し、宇宙ステーションで6か月滞在して、日本の実験棟「きぼう」などで科学実験などをする予定だそうです。今後は、宇宙飛行士の定期的な輸送をNASAから請け負う見通しで、企業による宇宙の商業利用の時代に突入したのでしょう。今回船長を務めるNASAのマイケル・ホプキンス飛行士は、世界的な感染拡大や経済危機をあげ「みんなの生活に前向きなものが届けられればと思い、レジリエンスと名付けた」と話しをされたと複数メデアが伝えています。

日本語では「回復力」とか「強靱化」あるいは「弾力性」など訳されることが多いレジリエンスですが、2011年の東日本大震災を契機に、2013年12月に「国土強靭化基本法」が成立し、国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)が安倍政権の政策となっていたことはご存じですよね。一昨年、14都道府県で200人以上がなくなった西日本豪雨時の岡山県倉敷市の真備地区の大水害、昨年の多摩川の氾濫、今年の球磨川の氾濫では、病院や特別養護老人ホームが浸水して痛ましい被害がありました。確かに、治山治水に始まる国土強靭化は今も昔も最重要施策ですよ。強靭化すれば、完全に被害がなくなるわけではないですが、災害を最小限にしたり、復旧を敏速に行ったり、そのために必要なシステムを構築することの総称をレジリエンスといっているという、理解が必要なのだと思います。

心理学的な意味では困難な状況にかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力のことだとか、心理的に追い込まれたり苦しめられた状態からのしなやかな復元力とか、回復力のことを意味することが多いようです。

地球温暖化、異常気象、広範囲な山火事、大地震や津波、パンデミックそして戦争はこの地球上からなくなる気配がないですね。被害にあうかあわないかは、運が良いとか悪いとかではなく、起こさないためにささやかな努力と協力を粘り強く継続することが、つくづく大切なのだと思います。起きてしまったことに対処するより、誰にも評価されないが起きないように日々努力している人がヒーローなんだということが、65歳過ぎてからマジで理解できるようになりました。もし、それでも起きてしまったら被害を最小限にし、2次被害を発生させないように努力し、事前の計画に基づいて敏速な復旧に取り掛かる覚悟が必要ですよね。そのような準備には、あたまもカネも連携も連帯も覚悟も粘り強さもリーダーシップも必要なのですよね。

◎レジリエント計画が必要なのだ

厚生労働省が中心となった医療計画や働き方改革が進められている一方で、現在、各介護保険者は介護保険事業計画、都道府県は介護保険支援計画を策定中です。今回のパンデミックが未だ収束段階ではないと思いますが、これらの計画に何らかの被害が起きた場合に、ただちに復元あるいは復興させるような計画をあらかじめ立案することが必要なのではないかと強く思います。政府や行政が考えた経済政策、財政政策、金融政策、おまけに年金以外の社会保障政策分野の計画が、計画通りに成就したためしがないではないですか。少なくとも経済・財政・金融が計画通りに行かないのだから、社会保障の長期計画も的中率は低いといっても、誰も反論なさらないと思います。

それでも、しなやかな回復力とか復元力、あるいは今よりパワーアップした確実な強靭化を達成しようという政策立案が必要だとは思わないですか?1頁に書きました人口10万人当たりのICU病床数の全国整備計画を医療計画の中心に入れてもらえないのでしょうか。

ICUの個室化をしないと感染症に対応できませんね。ECMOの本物観たことありますが、最低1床当たり30㎡ぐらい必要でしょう。人はともかく病室とか医療機械は整備に時間とお金が必要ですよ。まず、既存のICUの個室化、もちろん平時はHCUの個室として使用できる病床の整備とか、感染症有事に対応できる医療従事者の計画的教育訓練費の確保、有事の際の手術室の病室化も可能なように変更するとともに診療報酬もしっかり算定できるようにしないとだめですよね。

PPEは大量に長期保存を各病院さんや高齢者施設の皆様にお願いするとか、サージカルマスクなどは国産化できるようにするとともに、生産・流通、保存そして納期などを計画化できませんか。官僚では無理ならオールジャパンで行きましょう。これから20年本気でやれば、できますよ。ナンチャッテ急性期の病床を集約化して、ICUやHCUに資源集中して、医療従事者もそんなに急性期がお好きなら毎年感染症緊急時対応可能な研修に参加してくださいよ。やろうと思わないからできないわけですよ。ビジョンが貧弱だから日本の医療が質的に改善しないんじゃないですか。パンデミックが終わったら、政治家も官僚の皆様も、ドイツやアメリカの医療現場をしっかりみつめてくださいよ。

少なくともアメリカやドイツの半分以上に追いつかないと世界とのレースは負け続けますよ。世界の大災害に緊急医療援助できる国にしましょうよ。もし今度パンデミックが起きたら政治的な損得やパワーバランスなんか脇に置いて、世界に貢献できるシステムを構築しませんか。狭い国土で農業生産性を最大化し、諸先輩の努力で戦後復興させてもらったのに、為せば成る為さねばならぬの迫力がなさすぎませんか。世界に貢献しよう、人の生命や生活のために働こうという気迫が足りないんじゃないでしょうか。みなさん。

社会医療ニュースVol.46 No543 2020年10月15日