異次元の少子化対策を考える場合に婚姻外子をどのように受け止めるか

6月13日総理官邸で全閣僚を構成員とする「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」が開催され、閉会後の岸田総理は次のように述べました。

「本日、女性版骨太の方針2023を決定いたしました。すべての人が生きがいを感じられ、多様性が尊重される、持続的な社会の実現のため、以下3つの重点事項について取組を進めます」

「第1に、女性活躍と経済成長の好循環の実現に向けた取組の推進です。企業における女性登用を加速化すべく、まずは日本を代表するプライム市場上場企業が2030年までに女性役員比率を30パーセント以上とすることを目指とし、2025年を目途に女性役員を1名以上選任するよう努めるとする数値目標の設定や、各企業による行動計画の策定を促進します」

「第2に、女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の強化です。長時間労働慣行の是正など、多様で柔軟な働き方の推進、女性デジタル人材の育成など、リスキリングによる生産性の向上、地域のニーズに応じた取組の強化などを進めます」

「第3に、女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現です。先般成立した配偶者暴力防止法改正法の円滑な施行など、DV(ドメスティック・バイオレンス)対策や性犯罪・性暴力対策の強化、事業主健診の充実など、生涯にわたる心身の健康への支援を進めてまいります」

「以上3点に加え、第5次男女共同参画基本計画に掲げられた、女性の登用目標の達成に向け、科学技術・学術、防災など、各分野における取組を一層加速してまいります」

◎骨太方針での少子化反転と包摂社会の実現の宣言

6月16日には「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」(いわゆる「骨太方針」)が閣議決定されました。

今年の骨太方針では「三位一体の労働市場改革を通じた構造的賃上げの実現や、これによる分厚い中間層の形成」「人への投資、グリーン、経済安全保障など、市場や競争に任せるだけでは過少投資となりやすい分野における官民連携投資の拡大による、持続的な成長の実現」「少子化傾向の反転に向けた、こども・子育て政策の抜本強化や包摂社会の実現」「G7広島サミットの成果も踏まえた、同志国等との連携強化を通じた戦略的外交・安全保障の展開」などが盛り込まれています。

特に「3.少子化対策・こども政策の抜本強化(加速化プランの推進)」では「若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、こうした状況を反転させることができるかどうかの重要な分岐点であり、ラストチャンスである」

また「4.包摂社会の実現」では(女性活躍)(共生・共助社会づくり)(就職氷河期世代支援)(孤独・孤立対策)についてそれぞれの方針が示されています。こうした骨太方針での少子化反転と包摂社会の実現の宣言は、最優先の課題として少子化対策や包摂社会を実現することが必要で、こられなくしては経済発展も財政再建ももはや実現しないという認識が、岸田政権では共有されているのかもしれないという期待につながります。

◎女性が闊達に生きられれば経済も社会も発展するはず

最近、どう考えても「女は度胸、男は愛嬌」なのではないのかという幻想にとらわれています。男性は体力的に女性より勝っているのかもしれませんが、身体力が経済成長させ知力的に男性が勝っているというエビデンスはありません。むしろ封建社会の遺物あるいは軍国国家の残滓としての男社会の弊害が心配でたまりません。

2023年版の世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では、日本は146カ国中125位と低迷しています。特に、政治分野での男女格差が大きいことが響いているとの指摘も多数あります。政府は、プライム市場に上場する企業の女性役員比率を2030年までに30%以上とする目標などを盛り込みましたが、それだけでは社会の発展はありません。

「愛嬌」とは「ニコニコして、かわいらしいこと。茶目っ気があり魅力的なこと。人に好かれるような言葉や振る舞い」のことで、女性への形容詞のように使われますが「愛嬌あるあかちゃんのしぐさ」などともいいますので性別に関係ないと思います。

英語でチアフルというと「陽気で元気でニコニコしている」というニュアンスですが、愛嬌ならチャームですので意味は違います。ただ、チアフルとチャームには共通点もあるように思います。カレッジといえば度胸ですが男女の別はなく使用されます。

だから「女はカレッジ、男はチアフル」が富の源泉なのではないかと妄想しているのです。何しろ、古めかしい女性への社会的制約を取り払い、自由闊達に活躍して欲しいのです。そうすれば経済も発展し社会も豊かになるのではないでしょうか。

◎性役割や男女差別が少子化の原因なのだ

韓国の少子化の主な原因としては、若者の経済的状況の悪化、若者の結婚や出産に関する意識が変化していることとともに、男女差別が根強いという側面があることは否定できません。ただ「男が家を準備して妻を迎える」が当然というのは、性役割文化です。

「結婚して家を継ぐのは当然である」と考えれば、「結婚しないことは親不孝」なのだというという理屈になるし、男女格差、男女差別の温床になる。結婚するかしないか、こどもを生むかどうかの決定権は、完全に女性の権利なのです。

韓国や日本では非嫡出子と呼ばれる婚外子は2%程度ですが、スウェーデンやフランスは60%程度、アメリカやドイツも40%程度です。厚労省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果」では、18歳未満のこどもがいる母子家庭が119.5万世帯、父子家庭が14.9世帯でした。このひとり親世帯のこどもと、婚姻外子は何が違うというのでしょうか。

婚姻外子をどのように受け止めるか、真剣に考えてみましょう。

社会医療ニュースVol.49 No.576 2023年7月15日