医療の需給関係が一夜にして激変そんなことが起こる予感がする?
「ノーベル医学・物理学賞受賞の木村智先生が開発に貢献した抗寄生虫薬のイベルメクチンが厚労省の治療薬候補のひとつに明記されている」「日本では未承認薬だがアストラゼネカ社の慢性リンパ性白血病治療薬であるアカラブルチニブが有効かもしれないという研究成果があり治験が進んでおり、3月ごろには知見が公表されるかもしれない」「感染患者さんの血液から製造される血清が有効かもしれない」。世界中で発信されているコロナウイルスのパンデミックに対する情報量は大量で、とてもすべてを確認することはできません。日本語で信頼できるニュースソースは、国立感染症研究所のHPが唯一だと思います。
各国から各種の情報源がありますが、昨年秋以降の感染研の情報は情報量も正確性もダントツで、これさえ読んでおけば大きな間違いはしないで済みますし、テレビにでている専門家という人々のネタ元のひとつが感染研HPであることは間違いないでしょう。全く素人だと読みにくいし理解できないこともあると思いますが、少し勉強すれば何が書いてあるかはわかるようになります。まず、感染研の研究者の皆様に敬意を表したいし、世界中の研究者に感謝したい。あの感染研の建物内であの人数で、こんなに大量の情報を処理しているだけでも称賛に値すると思います。実は、わたしは厚生省の試験研究機関のひとつである国立医療・病院管理研究所の医療経済研究部長時代を現在の感染研の同一建物内で過ごしたので、感染研に親近感があります。今回のパンデミックを契機に感染研の組織も人員も予算も倍増して欲しいと声を大にしてお願いしたいのです。
国立大学は別にして国立試験研究機関は各省庁にたくさんありますが、すでに40年以上、行政改革だとか、民営化とか、省庁再編とか、業務仕分けだとか、研究成果主義だとかいう、およそ研究業務に専念したことがなさそうな人々からの暴力的発言に翻弄され、これに対応するために研究どころではない状況に追い詰められてきました。わたしは、少なくても批判の的側で、何も成果がない防御戦に苦戦した体験があります。世の中に研究者といわれる人は沢山いますが、全ての研究者が輝かしい研究成果を発表できるわけではなく、世間の注目を集めるのは研究所で20年に一度、研究者の5%以下ではないかと勝手に思い込んでいます。
ノーベル賞が注目されるのは、人類の輝かしい研究成果はマレだからでしょう。ただし、そのマレな研究成果が人類を救うことがあったし、これからもあり続けるのであろうから、研究は面白いし楽しくてやめられないものなのです。何らかの研究成果によって一夜にして世界が変わる瞬間を共有できる歓喜を体験したいと思うし、今回のコロナウイルス治療薬が発見されれば、その時であると夢見ています。
◎恐怖より希望のひかりだよ
いつ自分が感染するのか?職場でクラスターが発生したらどうすればいいのだろう?感染しても無自覚な人もいるが、後遺症がひどい人もいるらしい。重症化すると死亡する確率が高くなる。おまけに感染したら差別されるかもしれないという恐怖が重なり、それが大きなストレスとして憎悪しているとしたら、どうしていいのかわからなくなるのかもしれません。まずは、正確な情報を集め、自分で考え、行動を自ら決定するしかないないといってみても、なんの慰めにもならないでしょう。ただ、ワクチンもできたらしいので、少しは先が見えるような気もするし、特効薬はないものの治療方法は日々改善され死亡者は急増していないし、研究者が血眼になって治験を実施しているので治療薬が発見されるかもしれないと思えば、結局、なるようになるのだろうと悠長に構えるしかなさそうです。どんなに注意しても感染してしまったら専門家の指示に従う、もし職場で感染者がでたらマニュアル通りに適切に対応することだけは準備した方がよさそうです。
どこにでも悲観論者はいるものですが、ヒトが生き続ける最低限のものが希望であるということを、今一度かみしめることが必要なのではないでしょうか。「夢なきところ民は滅ぶ」という言葉は、大好きですが、逆に夢も希望も無くなってしまえば、絶望の窮地に追い込まれるだけになりますよね。ヒトは生きていること自体が希望で、希望があるからこそ夢が描けるのではないかと信じています。他者に対する差別や中傷の事実を目の当たりにすると、今の世相に対して「恐怖より希望のひかりが大切なんだ」と叫びたい衝動が沸き上がることがあります。悪いことはいつまでも続きませんし、状況はいつか好転するものだというスタンスが大事なのではないでしょうか?
◎医療の需給関係が激減?
1頁に書いたように外来医療の需給関係は大きく変化しています。では、入院医療はどうでしょう?各種統計をみているのですが、ラチがあきません。感染症患者さん以外の重篤な患者さんは減少気味です。その他の急性期病床は定性的な情報だけでは減り気味ですが、退院させないよう努力している病院があるらしいとささやかれています。精神科病床以外の療養病床の病床利用率は高止まりですが、在院日数が長くなっている傾向が認められます。大きな声ではいえませんが地域包括ケア病棟が苦戦しているという病院がいくつかあります。診療所からの入院患者さんの紹介が減り、急性期病床の在院期間は長期化する傾向があると、地ケアへの転棟患者さんが減ります。地ケア病棟は60日までしかいられないので退院させますが、急性期から患者さんは来ませんし、在宅からの患者さんも紹介されてきませんので、利用率が回復しません。回復期リハ病棟は適応外患者さんを入院させているかもしれません。
はっきりいいますと、各病院は多少無理して利用率の回復に努力しています。理由は傷病者の減少なことは明らかですが、病床種別によりタイムラグがあります。ただし、在宅療養患者は確実に増加傾向です。今年は、療養病床の患者減という傾向が現れるのではないかと思います。どうしますか?
社会医療ニュース Vol.47 No.546 2021年1月15日