世界関税大不況と頭脳流出
4日の米株式市場は大幅続落し、ダウ工業株30種平均は5.5%の急落を記録しました。この下落は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が関税の影響について警戒を示したことや、米中貿易摩擦の激化が懸念されたことが要因とされています。
よくわからないことばかりですが、歴史的を振り返れば、貿易戦争は短期的には国内産業を保護する効果があるものの、長期的には世界経済の停滞を招く可能性が高いとされてきました。トランプ大統領の関税政策は国内産業の保護を目的としていますが、報復関税による影響で輸出企業が打撃を受ける可能性もあります。
また、中国は対抗措置として輸入制限や技術移転の規制を強化しており、これが世界のサプライチェーンに影響を及ぼすことが懸念されているとのことです。
心配なのは米国内のトランプ反対派がどういう行動をとるのかということです。どの程度かはわかりませんが、ヨーロッパやオーストラリアに移住を計画中の研究者や大学の教員が増加しているということは間違いないようですし、医師や看護師でもいたたまれないので移住する明言している人々もいます。日本では世界関税大不況みたいなことに関心が集中していますが、どう考えても頭脳流出は大問題だと思います。
戦後の米国経済の発展の要因のひとつが、ヨーロッパからのユダヤ人研究者の頭脳流入にあったことは明らかです。特に、ナチス政権下で迫害を受けた多くのユダヤ人科学者や学者がアメリカに移住し、科学技術や経済学の分野で大きな貢献をしました。
例えば、物理学や化学の分野では、マンハッタン計画に参加した科学者の多くがヨーロッパ出身のユダヤ人であり、これが米国の科学技術の飛躍的な進歩に寄与しました。このような「頭脳流入」は、米国の学術的・技術的な基盤を強化し、戦後の経済成長を支える重要な要素となったのです。
医療の世界でもこのようなことが起こりましたし、戦後の英国の国民保健サービスによる臨床医の登録制度などに反対した医師が米国に渡り医療技術の普及や研究開発、医療サービスの質にある程度影響を与えたであろうことは確かだと考えられます。このようなことを考えてみると、トランプ政権に賛成する気には到底なれないのです。
社会医療ニュースVol.51 No.597 2025年4月15日