2024米国の選択はジェノサイドの中止とリベラル的思考の忌避なのか
次期第47代大統領にドナルド・トランプ元大統領が決まりました。大国のリーダー選挙について大喜びすることも批判することも何もありません。手続きとしての民主主義は、自由で公正な選挙の結果によって権力が移行することなのに、「民主主義の脅威」などという言説が世界を飛び回るのはいかがなものなのでしょう。
米大統領に世界が期待しているのは、「何の罪もない子どもが殺戮されるのを止めろ」ということなのではないかと勝手に解釈しています。なんとなく、ハリス副大統領には無理みたいな雰囲気が意図的に醸し出されていたようにも思うのです。この先、どうなるかについては何もわからないのに、世界大戦とか原爆に世界が怯えているだけなのかもしれません。
この何年間でリベラルやリベラリズムという言葉が何を意味しているのかということが曖昧というか、正確に理解できなくなっているのではないかと思います。「保守」が伝統や風習を重んじ保存しようとすることで、反対の「リベラル」が個人の自由、個性を重んじ自由主義的なことなのだという程度の区別では何もわかりません。極端な自由至上主義者はトランプ支持で、偏見や差別と闘うのがハリス支持などという単純な理解では、何も説明できないのです。
目を覚ますことを意味するWakeの過去分詞Wokeには「覚醒する」という意味があって、黒人差別に対する警戒を意味するアフリカ系アメリカ人の俗語英語から派生し「社会で人種や性別に関する偏見や差別などの社会問題への注目を呼び起こす」こととして使用されるようになりました。そこからWokeを名詞形にした新造語Wokenessが誕生して「社会正義に関わる問題について、気づきの状態にあるだけでなく、問題の解決に取り組もうとするポジティブな合言葉」として、欧米を中心に使われはじめたらしいのです。
この言葉自体が気に入らない人々はWokenessを「リベラルエリートのばかばかしいほどのアイデンティティへのこだわりへの反発」という隠語として使用しているとのことです。
リベラルエリートというのは「自由主義的で、教育によって豊かさ、富、権力への扉が開かれてきた人々を指し、専門職・管理職階級を形成する人々」のことです。ただし、この言葉は侮蔑的に用いられことがあり、「労働者階級の権利を支持すると主張する人々自身が支配階級の一員であり、彼らの支持が低所得の労働者のニーズから乖離しているという批判的意味合い」で使用されているらしいのです。
◎高学歴高所得となったリベラルが敵視される
米大統領選で保守党の得票数が民主党の得票数を上回ったのは20年ぶりだそうです。その理由がインフレと不法移民の急増に対する嫌悪感なのではないかというステレオタイプの報道が多いように思います。昨年から食料品価格が8%程度上昇し、本当かどうかわかりませんが、不法移民に対する住居やフードクーポンへの政府の出費が無駄と考えられ、かつて不法移民で、その後米国籍を取得できた人々が「不法移民が増えると職が奪われる」という不安を感じているそうです。
歴代の民主党政権は環境問題や各国の人権問題に関心が高く、もちろん米国内の人種や性別に関する偏見や差別などの社会問題への関心が高いことがリベラルの象徴のようでした。10年前まで、このような考え方は米国を含め38カ国の先進国が加盟するOECDの共通認識であったのではないか、と私は思います。しかし、世界中で起きている紛争や戦争の抑止力、インフレ対策、不法移民に対する厳格な対応が実行できていないのではないかという批判的な見方が勢力を伸ばしたのが米大統領選だったのでしょう。
どのように調べてみても米国の世論は、今や高学歴高所得となったリベラル層をそれ以外の人々が敵視するように変化したのでしょう。わたしが訪問したことがある米国はハワイや西海岸、ニューヨーク北東の州や5大湖周辺の州ばかりですが、これらの州はかつて保守党より民主党が優勢な州でした。今回選挙で五大湖の周辺のインディアナ、ミシガン、ミネソタ、ニューヨーク、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの各州が赤でそまり、イリノイ州だけが青という結果になりました。
高学歴高所得リベラルへの米国民の忌避という状況は、大問題と認識されていないのかもしれませんが、それはマスメディアの人々は圧倒的にリベラルな人が多いからかもしれません。
◎パッシングされている日本はどうするのだ?
トランプ元大統領の勝利に日本中が戸惑っているように思います。どちらかが勝つという結論しかないのに、「トランプ大勝利バンザイ」みたいな報道が珍しいのは、日本がリベラルに染まっているからと考えることはできないでしょうか?その証拠に「トランプ大統領になると日本はどうなる」というようなネガティブな論調ばかりではありませんか。
関税や防衛費で影響はあるのでしょう。恐ろしいのはジャパン・パッシング「日本素通り」ですよね。世界から相手にしてもらえるように原爆や戦争によるジェノサイドは絶対許さないというアイデンティティを確立して、世界に貢献できる日本でありたい。
社会医療ニュースVol.50 No.592 2024年11月15日