ニューイヤーコンサート バレンホイムのオペラ
元旦の楽しみはニューイヤーコンサートです。
ダニエル・バレンボイムの学友会館での元旦指揮は今世紀3回目で、聴きごたえがありましたね。かのフルトヴェングラーに「天才」と呼ばせたかつての少年は、また1歩高みをめざし休むことなく師の背中をおうかのように活動しています。
昨年6月には16年ぶりに来日し、サントリーホールでリサイタルを開催しましたよ。今年11月には卒寿を迎えられるはずなのにバリバリの現役であることが、何とも頼もしく生きる勇気をいただいています。
バレンボイムとウィンフィルの相性は抜群で、奏者の皆様方が楽しそうというか、本当にイキイキしている感じが画面から伝わります。それもそのはずでこの両者の取り合わせは昨年末までに162回を数えるそうです。
それにしても、暮れの第9よりも元旦の明るいウィンフィルの方が好きです。特に、どんな曲が何番目に演奏されるか期待感が高まります。演奏される曲が作曲された年代を調べ直してみると、その時代のウィーンの雰囲気は暗雲が立ち込める息苦しい時代だったことがよくわかります。
だからでしょう。ワルツは飛びぬけて明るいし、華やかな舞踏会へいざなってくれているように聴こえます。また来年に期待して待つことにします。
◎バレンボイムのオペラ
バレンボイムはピアニストとマエストロの一人二役をしていますが、わたしはオペラのタクトが素晴らしいと感じています。偉そうに書いていますが、1993年ベルリンで「フィガロの結婚」を楽しみ、2008年に「トリスタンとイゾルデ」に圧倒されました。そして2012年スカラ座での「ローエングリー」は超一流だったとしかいえないのです。
オペラは歌手が注目されることが多いと思いますし、決め手の一つが合唱団のこともあります。もちろん演出は決定的ですが、歌詞とかけ離れたようなこの10年の奇抜な演出は当たりハズレがあります。当たり前のことですが、オペラは何しろオーケストラと指揮者によって伝わり方も完成度も違うのです。
彼の指揮は必要な最低限の動きしかしませんし、オペラ歌手は楽器の一種として参加しているのだということが伝わってくるような気分にさせてくれます。
例えば、媚薬を飲んで40分以上もイゾルデがソプラノ独唱する場面は、うんざりというかグダメキを聴いて楽しいという気分になれず好きにはなれませんでしたが、オーケストラとの息がぴったり合うと総合芸術としての真価が見え隠れするだろうというワグナーの思いが伝わってくるような気がしました。
一生のうちで、バイロイトでバレンボイムのリングを観に行きたいと思いますが、この取り合わせが可能な確率はかなり低くなっていますが、夢として大事にしたいです。
社会医療ニュースVol.48 No.558 2022年1月15日